海底の宝物庫 | ナノ
始まり  [ 10/19 ]


遥かなる時の中


王都には城壁が存在する


外敵・異国から民や街を守る


そびえ立つ城壁


しかし―――


それを必要としない都があった…


地形を利用した自然の城壁



白虎



朱雀



青龍



玄武



四神に守られた聖地






―――――平安京―――――






呪え…


死に絶えろ…


この地に住む人間ども


京人を


呪え―――…






四神を、我が手に……!!






【始まり】



「…?」


何だ…?誰かが呼んでる…?


誰かに呼ばれたような気がして、俺、元宮 葵は後ろを振り返った。
けど、当然ながら気がしただけで実際に呼ばれた訳ではないのでそこには誰もいない。


「お兄ちゃん、どうかした?」

「あかね…。いや…何か、誰かに呼ばれた気がして…」


立ち止まり後ろを見つめていた俺を不思議に思った妹のあかねが、首を傾げながら隣に並んだ。

うん、首を傾げる姿が可愛いですね。

そんな俺のシスコン全開の内心など知る由もないあかねは、不思議そうに周りを見回しながら口を開く。


「…?何だろう?私には聞こえなかったよ?」

「そうかぁ…。疲れてんのかなぁ、俺」


ここ最近、間近に迫った教育実習の事やら卒論やらゼミやらでどたばたしてたし。
…それにしたってよく幻聴が聞こえるっつーのはどうなのよ俺。


自分に言い訳しつつ、それにセルフ突っ込みを入れていると、あかねが腕まくりをする仕種をしつつ嬉しそうに言う。


「じゃあ今夜、頑張ってるお兄ちゃんの肩を特別に揉んであげるよ!」

「お〜。それは助かる」


あかねの気遣いに思わず頬を緩めながら言う俺はさながら父親になった気分だ。
ほら、なんていうか娘に肩もみしてもらえるときのあの何とも言えない気持ちだ。
(ってこの前うちの親父があかねに肩もみされながら嬉しいのやら恥かしいのやらって言ってた)

そんな他愛もない話をしているうちに、あかねの通う高校と俺の通う大学への分かれ道に差し掛かった。
少し離れた場所にはあかねと仲のいい後輩と先輩同級生が見える。
(ちなみに先輩同級生はあかねに好意を抱く目下第一ブラックリストだ)

あかねも二人が視界に入ったようで、俺に見せる笑顔とは少し質の違う笑顔を浮かべ、そして少し後ろを歩いていた俺を振り返った。


「じゃあお兄ちゃん、大学頑張ってね!」

「あかねも、しっかり勉強頑張ってこいよ」


わかってるってば!といいながら二人に向かい走り出したあかねを見送り、俺も大学に向かうために歩き出した。
…その時。



――……神子……我が神子……―



「っ……?」


まただ……何処から……


しばらく俺が一人で歩いていると、また先ほど聞こえた不思議な声が今度は頭に直接響くように聞こえ、俺は辺りを見回す。



――……神子……我が神子……―




「…こっち、か?誰なんだ、俺を呼ぶのは」


暫く歩いて行くと、俺はひっそりと佇む古びた井戸を見つけた。
それにゆっくり近づくが、何の変哲もないその井戸に内心首を傾げる。
そもそも、だ。


「…こんなところに、井戸なんかあったか?」


いくら少し道に逸れた場所だからといって、もう3年以上は通ってきた大学の道なのだ。

こんな古井戸があれば、知らないにしても怪談話に上がってきてもおかしくはない。
そもそも、何故こんな古井戸に安全柵がされていないのだろうか。



……――見付けた…我らの神子…



「え…?」


俺が不思議に思いながら古井戸を観察していると、更に近い場所で声がして振り返る。
思った次の瞬間、俺はいきなり風に包まれた。
それに焦り慌てて井戸から離れようとするが、俺の意思とは逆にどんどん井戸へと吸い寄せられていく。


「おいおいおい!勘弁しろってマジでお願いだから!!!ってか!、井戸に吸い込まれるって完全にホラーだなおい!!!!!!」


なんとか抗おうとするも虚しく、俺は足を枯葉に取られ井戸の中へと吸い込まれてしまう。


「ひっ…?!」



…―我らが神子…そなたを迎えに…



「っ……うわぁぁぁぁっ」


そして風がやんだときには、誰もいなくなっていたのだった…






始まり

(ていうか、今日レポート提出日なんですけどーーー!!!!!)

  
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