春一番
とろとろと微睡みそうな心地よさの中、カカシがポツリと言った。
「今年は春一番が吹かないそうですよ」
「えっ? そうなの?」
「天気予報でそう言ってましたよ?」
「ふ〜ん。今年は寒かったもんねぇ…」
「…寒くて任務辛かったし…」
「カカシは寒いの苦手だもんね」
「なるべくチャクラは温存しときたいし…」
「そうだね。チャクラで身体保護してれば違うけど、カカシの技はチャクラ食うもんね」
「…うん…」
「カカシが苦手な寒さでもさ、オレは好きだな」
「どうして?」
「うふふ〜、内緒」
「え〜、なんで?」
「内緒って言ったら内緒だよ」
「センセのケチ」
「ケチでけっこう。こんなおいしい事、勿体なくてカカシ君には教えられませーん」
そう言ってミナトはカカシを抱きしめる。
「もしかして、オレ絡み?」
「それも、内緒」
「う〜、センセ、ケチすぎ」
あははと笑ってミナトはカカシにキスをする。
寒い日はカカシが無意識のうちにすり寄って来るから嬉しいのだ。
それを言ってしまうと、カカシは意識して寄って来なくなるかもしれない。
現に今だって。
春一番は吹かなかったけれど、ほかほかと暖かい想いに包まれていた。
12.03.20
前 次
戻る