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人間の脳というのは実に不思議な働きをする。

自分のモノのはずなのに、時折、制御不能になるのだ。


「……阿佐ヶ谷くん」

「あ、」

「ごめんなさい。遅くなって」

「ううん。そんな、来てくれただけで、全然、」


ほんの小一時間前の、で、どうする?という問いかけに私は頷いた。

しかしその後の食事への誘いには首を横に振った。

実は朝から頭痛が、という嘘を添えて。


「てか、俺こそごめん。呼び出したりして」


理由は簡単だ。

必要以上に時間を共有する気がないから。

例え、付き合うという関係が岸本さんとの間に生まれたとしてもそれは変わらない。


「て……ごめん……俺、テンパってる……電話出てくれないだろうなって思ってたから、その、」


なのに今は、目の前に居る彼からの呼び出しに応えている。

雪が降らなかったとはいえ、冬真っ只中の十二月。

星の輝きが肉眼で見えるくらいに暗く、厚手のコートを着ていても寒いというのに。

律儀に彼からの電話に出て、自宅からそう離れていない夜の公園へと足を運んだのだ。


「……わっ、渡したいモノがあって、」


何故だろう?

なんて疑問は浮かばない。


「……何?」

「……こ、これ……クリスマス……プレゼント」

「……」

「っごめん、本当……キモいと思ったんだけどさ、その……俺……馬鹿だから、クリスマス、一緒に過ごせると思ってて」

「……」

「だからその、浮かれてて……本当……これも、結構前に見つけて……奏に似合いそうだったから買っちゃって」

「……」

「……捨てようかなって思ったんだけど……何か……無理で」

「……」

「や、も、本当……女々しくてごめん……す、捨ててくれていいから……渡せただけで、満足だし、その」

「……ううん……捨てない」

「……え、あ、」

「……嬉しい……ありがとう」


だって、私は。

その、何故、を知っているから。


応答=無意識
(……キミのせい、だよ、)

 
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