切原くん家のお姉さん
心ここに在らず
私はそのまま中学校の校門を出て病院に行こうかと思ったが、流石に鞄を置いたまま病院に行く事は無理なので一旦、教室に戻る事にした。
教室に戻る途中、階段で転けたのは恥ずかしかった。 誰にも見られて無かったと信じたい。
教室に着いて鞄を手に持ち、そのまま目の前でパンを頬張っている彼に声をかける。
『前田くん』
「ん?どうした?」
『早退するからって先生に言っといてくれないかな?』
「オッケー…」
そう言うと前田くんはキョロキョロと周りを見た。
『千春はまだお昼ご飯食べてるよ』
「うっ…」
前田くんに笑いかけて、教室を出た。
本当に千春が好きなんだなー… と思いながら下駄箱に向かう。
下駄箱に着いて靴を履き替えていたら、フェンスをよじ登る千春とミチルがいた。
周りから見たらこんな感じなんだ…これからは周りに人が居ないか確認しよう。 そう思いながら千春達に声を掛けずに私は病院へと向かった。
『ふー…』
病院に着いて、先に診察を受けるべく受け付けに向かった。
呼ばれるまではボーッとしている。
特にする事も無いし…後で幸村くんの所に行くし… 本当に暇だなー、何て思いながら上を向いた。
「切原さーん!!」
『はーい』
返事をして看護師さんの後について診察室に入る。
「どうだい?体の調子は」
『大丈夫です』
入って早々、先生に話しかけられながらも診察を受ける。
「うん、大丈夫みたいだね…一応薬は出しとくよ」
「お願いします」
簡単に診察が終わり、先生にお礼を言って受け付けに行き薬を貰い、そのまま幸村くんの病室に向かう。
コンコンと、ノックをすると直ぐに返事が帰ってきた。
『久しぶり』
そう言って中に入ると幸村くんは笑って"久しぶり"と答えてくれた。
『体はどう?』
「特に変わりはないよ」
『そう…』
そう言って、窓の外を見つめた。
「…まだ授業中だよね?」
『………』
「何かあった…??」
幸村くんの問に私は答えず、笑って返した。
感情
幸村くんは何も言わなかった… 私は黙って空を見つめ続けた。
20120514
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