切原くんお姉さん
支え

お互い何も話さないまま時間だけが過ぎていく。
風が吹いて木々が揺れる音を耳にしながら私は壁に凭れた。


幸村くんは私を気遣ってか何も聞いてこない。
有り難いような、悪いような複雑な気分。



『私、今から独り言言うけど良い?』

「別に構わないよ」



私は幸村くんに心の中で"ありがとう"とって椅子に座った。



『心の安定剤…みたいなものって誰にでもあるじゃない?誰かに会いたいって思ったり物だったり色々、私の場合"誰かに会いたい"なの…最近は天ちゃんや赤也達だったんだけどね…でも昔から私の事知ってる人達が居るの、辛いとき、苦しいとき、どんな時も支えてくれた人達が』




"実奈"
"実奈ちゃん"
"実奈先輩"
"実奈…"




『どんなに会いたいと願っても、会えないって言うのは辛いね…私にはあの人達の代わりなんて…っ』



涙が零れそうになった。



「もう…良いよ…」



何に対して"もう良いよ"なのか分からないけど幸村くんはぎゅーっと私を抱き締めてくる。


そんな彼を私は引き離そうとした。


ふと、私の独り言はこの世界を拒絶する言葉だったのかもしれない。
何て今更ながら思った。



『ねえ…』


「嫌だ」



え、何この子。
とか思いながら仕方なく引き離すのをやめた。


私が力を抜いた途端、幸村くんの腕の力が少し緩くなった気がした。



「実奈、俺はその人達の代わりなんて出来ない…でも実奈が苦しいとき辛いとき幸せなとき…どんな時でも傍にいたい」



苦しそうにそう言った彼は何を思っているのか…
私には分からない事だけれど考えられずにはいられなかった。





支えたい

苦しそうに話す君を見ていて
自分まで苦しくなって、
涙が零れそうになった。




20130702
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