中篇 | ナノ

【ディラハプ】ようこそレストランプトレマイオスへ


 ここは日本国のうちのどこかの閑静な住宅街……と、夜も若者で賑わう大通りの間。そこにレストランプトレマイオスはある。
その店はシェフはまだ若いが腕はいいと評判で、シェフ目当てのマダムや可愛らしいウェイトレス目当てのおじさまなどがよく来ている。
夕刻のお客は程よく疎らで、仕事帰りのOLから小連れの若い夫婦、記念日を祝う老夫婦や長年勤めていた職場をリストラされたサラリーマンまで、来客層は比較的広めの落ち着く店だ。

ん?

「だからってなんで俺が止めさせられなきゃならないんだ!!!」

 ビールの入ったジョッキを呷り、勢いよく机にぶつける青年が一人。
いきなりの悲痛な叫びに、回りの客は一瞬そちらを見て、一睨みしてまた談笑に戻る。
付き添いの男が申し訳無さそうにまわりに頭を下げながら、うだうだとビールを啜る男に耳打ちをした。

「うぅっ、高校出て10年、働きに働いて出世も目の前、と思ったらこの仕打ち!なんだよ!誰が悪いんだ!俺は悪くねぇ!悪いのは日本だ!内閣総理大臣だ!」
「に、兄さんもうちょっと静かに……」
「うるせぇライル!俺はもう職無し金無し彼女無しのニートだよ!どうせお前の金なんだ浴びるように飲ませろォオオオオ!!!!!!!」
「俺の金なのかよ!?」

 よく似た、というか全く同じつくりの顔をしている青年二人は、金がどうとか、仕事がどうとか、家がどうとか、そんな話をレストランでしていた。
非常に迷惑極まりない。
やるなら居酒屋かファミレスでやれとその場にいた一同が思った。

「ぅう〜ライルせめて次の職場決るまでお前ん家止めさせてくれよぅ」
「やだよ。彼女との同棲生活邪魔する気か?それに家賃滞納してた兄さんが悪い」
「た、滞納したくてしてたわけじゃねえ!」
「事故に遭ってその金払うのに家賃使うとか馬鹿だろ。だから俺いつも貯金しろ保険かけろつってたのに馬鹿ニール」

 辛辣な言葉を弟であるライルに掛けられて、兄の方であるニールはぐっと押し黙った。
確かに高卒でそれなりの給料があるとは言えないニールは、あまり固まった貯金はしていなかった。
その反面弟のライルは高卒のニールの支援で大学を卒業、大手の商社マンになり給料も兄であるニールより上だ。
さらにニールと違い彼女持ち(しかも良家のお嬢様)で絶賛ラブラブ同棲中である。しかしライルも馬鹿では無い。
事故に遭ったニールの足りない慰謝料や、支払われない医療費を負担した。本人曰く「これで大学の学費チャラな」だそうだ。

「うん…そうだけどね……そうだけどね……俺今人生で最悪最低の運気だよ…俺厄年じゃね?…俺絶対今年死ぬんじゃね……憂鬱だ……」
「大丈夫だよ兄さん!ホームレスになったぐらいじゃ人は死なねえ!」
「……俺は……そう言う事を言いたいんじゃない……」

そんな事を何度も管を巻くように二人はぐだぐだと話していた。


「込み入った話の最中すみませぇん、当店は午後10時をもって閉店しましたー早く会計しろやオッサン」

 気が付けば、レストランの閉店時間である10時を回っていた。
だがそれ以前に店員の言葉に繊細(頭皮や腹周り的な意味で)な年頃である二人は酒の力もあってかブチ切れた。

「「誰がオッサンだとおおお!!!!?こちとらまだまだピチピチの20代だああああ!!!!!!」」
「いや年齢とかどうでもいいから会計」

 店員はいかにもどうでも良さげに鼻クソをほじりながら伝票をひらひらと揺らして見せた。
揺れる伝票には黒い文字と数字がびっしりと書きこまれている。

「「なにこれえっと…一十ひゃくせんまん…じゅっ……!?!?」」

 その伝票には法外な値段が記されていた。
こんなにも飲み食いした覚えは無い!
どちらかというと喋っていた方が長いのだ。

「ちょっ、なんなんだよこの値段!有り得ねえ!」

 店員に文句を言うが、聞く耳持たず、といった顔で怪訝そうな顔で店員は悪態づく。

「あ?お前らのせいで今日はいつもよりオーダーが少なかったんだよ…その迷惑料と俺様の機嫌を損ねました料金と閉店後延滞料金」
「はあっ!?そんなシステム見た事も聞いた事もねえぞ!それになんだ”俺様の機嫌を損ねました料金”って!!」
「この店は俺のテリトリーなんですー知らなかったお前らが悪…

「ハーレールーヤー?」

 俺様定員の後ろから鳴り響く癖のある唸り声。
俺様定員は、顔を真っ青にして冷や汗を流していた。それを見たニールとライルは、ラスボス登場か、とゴクリと息を飲んだ。
だが二人の予想を裏切り、姿を表したのはツノと羽を生やした牛だとか、鎧姿の黒光りするやつだとか、奇抜な化粧の道化師などでは無く、ハレルヤと呼ばれる俺様店員と瓜二つの顔をした青年であった。
この店の店員も双子とは、なんたる巡り会わせだろうか、などと考える暇など二人には無く今は目の前に現われた恐らくラスボスであろう人物をどう対処するか、に脳内の思考回路をフル活用していた。
横暴な俺様店員が怯える奴だ、下手に出たらウン十万を現ナマで払わせられ兼ねないとゆらりと構えるニールとライル。しかし二人を待ち受けていたのは予想外の言葉だった。

【次回予告】
突如現われたオレサマテンイーンに翻弄されるニールとライル。
伝説の秘技「プリキュア・マーブル・スクリュー」を使って必死に応戦するが、オレサマテンイーンが繰り出す技「シツギョヴテアテナーシ」や「カノージョトハキョーク」に成す術も無く二人は崩れ落ちる。
しかしオレサマテンイーンの後ろで手を引く魔王の姿に気付き、二人はモンスターを狩りお肉を焼きながらじわりじわりと魔王を討つタイミングを狙っていた。
しかし魔王を目にしたとき二人は粘液系触手モンスターに襲われて…!?☆彡
どうなるニール!どうなるライル!
次回ふたりはガンマイ☆お楽しみに!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・というネタを2009年2月24日に書いてたみたいです
勿体無いのでこっちにサルベージ。
残念ながら続かない
多分当時最強アレルヤでディラハプブームだったと思う

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