中篇 | ナノ

十章一節【肉体の悪魔】


血に濡れた指を組んで、いもしない神に祈って、







「ぼくはけがれてる」

彼に抱かれる直前、無意識の独り言のようにその言葉が吐き出された。
まるで自分の言葉では無かったかのように思えたが、その実、至って本心からの言葉でもあった。

「……」

白くしなやかな指先が、長く精錬された指先が。
ぼくの一番外側で立ち止まった。
その明るい茶髪と同じ色の睫毛で縁取られた碧眼が見開かれる。
その視線は驚きや軽蔑、憐憫、そのどの色も含んでいない。
ただ真っ直ぐに、ぼくの一番外側の殻を見詰める。

「……あのなあ?」

言い聞かせるような声でも無かった。
それこそ彼も独り言のように、癖のある声を出す。

「おれだって色んな女と寝たし、まあ数は多くは無いが、男の相手だってしたんだぜ」

彼の言葉は少し意外だった。
女性には苦労はして無さそうな事は察していたが、男性経験があるとは初耳だ。
……彼も少なからずこういう場所にいる人間であるという事なのだろう。
そういう意味で言ったつもりでは無かったが、性欲ならまだしももっと残酷な事のつもりだったが、彼の勘違いも訂正する気にはなれず、むしろ聞きたかったのでそのままにしておく。

「……それなら、今までにお前以外を愛したおれは、もっときたないおとこだよ」

かつてほかのにんげんをあいしたおとこが、かつてほかのにんげんにしいたげられたおとこにいう。

「だからお前の、お前が愛した最初で最後のにんげんになれるのなら、それでいい」
「……うん」

かつて最愛の女性を見捨てた男は小さく頷いた。
人間の皮を被った男が恋をしたのは、最初で最後。この目の前のただひとりのにんげんなのだと思えばこそだった。





そして、最愛の弟の為に、命を捨てた男は。




……

以下どうでもいい独り言。



兄さんはライルを愛して(家族愛的な意味であっても、なくても)いても
それなりに恋愛?して彼女はいたりしてたらいいと思った。(少なくとも14?話くらいまで女の影はチラつかせてそう〜悪い男〜〜〜)
暗い過去を持つ男性キャラは受け攻め関係無く一度は身売りをしてもアリなのではないかなと思ったりします。
絶対的処女はティエリアだけど処女ワンチャンあるでって感じはライル。次点ニール・刹那。(勧誘時期的な意味で)
アレハレはどう考えても非処女ルート回避不可なので私の妄想でくらいは処女でいさせてあげたい(?

2015.11.04

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