中篇 | ナノ

五章三節 【sweet my home】


…最近アレルヤは、白い服を好むようになった。
白だけじゃない、オレンジを始め黄や赤、青や緑のカラフルなものも、以前より多く手にとるのを見るように思う。
標準の成人男性であればそろそろ肉体の衰えが現れ始める三十代になっても、その鍛え上げられた質のいい筋肉は衰えを知らず、まだまだ現役ですと言わんばかりに引き締まっている。
その細くもがっしりとした肉体を、男性特有の色香と共にその白いシャツの中に隠しているのだから、尚恐ろしい。
しかもその魅力溢れる体の上には、世の女性が放って置かないだろう、ストイックな甘い顔が付いているのだ。 ……本当に同性である俺から見ても、大変魅力的な男性に成長したと思う。
誰にでも優しく、炊事洗濯掃除も万能、そして献身的に夫を支えてくれる良き妻だ。
ああそうか、妻なのだ。
目の前で真っ白のシーツを広げて、洗濯物を干しているこの人は、俺の、奥さん。

「どうしたの、難しい顔して」

パンパンッと景気のいい音を立ててシーツをはたくと、アレルヤは俺の方を振り向いて覗き込んできた。
金と銀のオッドアイはまるで猫みたいで、でも腰を屈めて覗き込んでるその姿はさながら大型犬のようにしっぽを振ってるのが見えてしまう。

「いや、なんでもない。…いい嫁さん貰ったなーって思って」
「急になんですか…褒めても、何も出ないよ?」

少し頬を染めて、照れ笑いをするアレルヤがカラカラと後ろ手にテラス窓を閉めて、ソファに腰掛ける俺の横にちょこんと座った。
あまり体格差は無い筈だけれど、小さく縮こまって座るのはこいつの癖だ。
すりすりとまるで猫のように擦り寄ってくるその姿は成人男性とは思えないくらいの殺傷能力を持っている。
ただし俺限定で。

「…いい天気だなー」
「そうだね。…今日は何処か出掛ける?」
「うーん…今日は、家で寛いでたい」

その擦り寄ってくる背を後ろから抱きすくめる。
今日はいい日だ。
多分、明日はもっといい日。

「ふふ、甘えん坊さん」

微笑って俺を抱きしめ返して、柔らかいキスがやって来る。
永遠に蜜月でいいと思う。
だって二人は、いつまでも新婚なのだから。




10/10/30 UP

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