Ailes Grises | ナノ

元エンディング2


いつも頭の奥で鳴り響いていた銃声は止んだ。
徐々に空は白んで行くが、やはり太陽は見えなかった。
いつだって暗いアトリエの窓が開け放たられる。
冬の朝の冷たい空気が、息を詰まらせた二人の頬を切り裂いた。
夜が明けた。
涙で瞼は腫れている。熱い頬には冷たい外の風がちょうどいい。

「寒い……」

身を震わせ、アレルヤは肩にかけていたストールでニールを包み込む。
大き目のそれは二人分の体温で温かみを増した。

「俺、今なら行ける気がする」

あの壁の向こうへ。
ニールはぽつりと呟いた。いつしか時計塔のてっぺんで聞いた言葉だ。
いつかあの壁の向こうへと行ってみたい。
それは罪憑きとなったニールが願う、巣立って行ったみんながいる世界。
穏やかで、誰かを憎むこともなく、妬むことのない世界。

「アレルヤ、目を瞑って?」

灰羽は人知れず巣立って行くのが決まりだから。
そう言ってニールは微笑む。
今までに見たことの無い、穏やかな笑みで。
満たされたような笑みで。

「……嫌、」

嫌。いやだ。あんなにもアレルヤは願った。
ロックオンを巣立たせてあげたい。何度も、何度も願い、頽れた夢だった。
老師に渡された真名を握り締める。
アレルヤはアレルヤで、祈り、願いである。
その願いの真意をアレルヤは否定した。

「貴方がいなくなったら、誰がこのホームを守るの、誰が名前を授けるの、一体、誰が……!」

悲痛な声はニールの胸の内へと消える。
しがみつくアレルヤの頭をニールは撫でた。

「お前がいるだろう」

だから引きとめないでくれ、とでも言うようにニールはアレルヤを宥めた。

「」

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