N.W.D -稲妻11別館-


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秘密特訓


「なあなあ、それって何を鍛えるための特訓なんだ」
 わくわくと返答を待つ純真な円堂の瞳に耐えられず、鬼道は顔を背けるように豪炎寺の胸元にそっと額を押しつけた。
「ん?……まあ、精神力とか色々な」
 くすりと笑った豪炎寺の言葉に、きょとんと首を傾げた円堂の気配に鬼道はバカと豪炎寺にだけ聞こえるように小さく呟きながら、その手はぎゅっと豪炎寺のシャツを掴む。
「よく分かんないけど……ま、いいか」
 にかりと笑った円堂に、豪炎寺は、ああと小さく頷いた。

「豪炎寺!」
 普段の鬼道の歩き方は少女らしさからは程遠い。
 勿論、そんな姿も含めて豪炎寺は好んでいたから、顔を真っ赤にさせて迫ってくる鬼道の姿に口許が緩みそうになるのを必死で抑えて、なんだと平然と返した。
「来月から、あれは禁止だからな!絶対に不可だ!」
 近くまで来た途端、捲くし立てるように発せられた言葉に、豪炎寺は疑問符を浮かべて、きょとんと鬼道を見返した。
 理路整然と話す鬼道にしては珍しい。いきなり指示語で話し始めるのは円堂だけで十分だ、と思いながら、落ち着け鬼道、と豪炎寺は肩に手を置いた。
「あれ、では分からないんだが」
 その言葉に鬼道がはっと表情を変えると、途端にきょろきょろと周囲を伺いだす。幸い、周囲には人影はなかったが、鬼道は徐に豪炎寺の手を掴むと無言で歩き出した。豪炎寺は理由は分からなかったもののぎゅっと握られた手の温もりに嬉しそうに頬を緩めると、同じように握り返す。その感触に鬼道の足が一瞬止まり、けれどもすぐに何事もなかったように歩き出した。
 あまり人の来ない場所まで豪炎寺を連れてきた鬼道は、ぱっと振り返る。
 その顔は少し落ち着いたとはいえ、赤いままだ。
「お、おまえがお姫様抱っこなんかするから、み、皆にせ……生理中だって」
 続く言葉は、恥ずかしさに耐えられなかったのか、もごもごと口の中に飲みこまれてしまったが、鬼道の言いたいことは十分に理解できた。確かにその通りかもしれない、と鬼道の熱が移ったように、豪炎寺も仄かに頬を赤くして、すまないと小さく詫びる。女性特有の気恥ずかしさは男子には分からないものがあったが、鬼道の言うことは尤もだと思った。
 けれどもその一方で譲れないものがあるのも事実で、だけど、と豪炎寺は言葉を続ける。
「具合が悪いときは頼って欲しい」
 その真剣な表情に鬼道の胸がどきりと高鳴る。
「鬼道が辛そうなのは嫌なんだ」
 好きな人間にそんな風に言われて、頑なに拒否できるはずもなく、鬼道は赤く染まった頬のまま、こくりと頷いた。

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