N.W.D -稲妻11別館-


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最初から最後まで豪♀鬼えろです。


「んっ……」
 ブレザーだけは脱がせた鬼道のシャツの上から胸に手を這わせながら、豪炎寺は啄むように二度、三度と軽いキスを落とす。鬼道の口から甘い声が漏れるたびに、ズボンの中で自身が昂ぶりを増すのに気づいて胸中で苦笑した。
 いつもより少し早足気味で駅を目指した後、電車の中では二人とも始終無言だった。普段から、豪炎寺はあまり喋らない方だったから、大抵は鬼道が話題を振って、それに豪炎寺が相槌を返すのが常で、けれども今日の鬼道は、俯いているか、車窓を流れる夕暮の風景に意識を向けるか、あまり興味もないくせに一生懸命週刊誌の中吊り広告を読んで、豪炎寺と目を合わせないようにしていた。鬼道がそんな振舞をする理由は豪炎寺にも容易に想像はついたので、声が聞けないのは少しだけ物足りなくはあったが、それだけ意識されているのだということの表れだと思えば、特に何か言おうなどとは微塵も思わなかった。ただ、しっかりと繋いだ指先にきゅっと力を籠めると、鬼道もきゅっと握り返してくれるだけで満たされる気がした。
 舌で鬼道の口唇を突くと、豪炎寺の意図するところに従順に従い、薄らと口唇を開いて、舌を招き入れる鬼道にどうしようもない程の愛おしさを覚える。
「ふぁ……」
 歯茎の裏を舐めるように舌を這わせると、鬼道が苦しげに首を振る。逃がさないように顎に手を添えてやると、大きく口を開いて舌が差し出された。
 舌を絡めながら、シャツのボタンを一つずつ外していくと、それに気づいた鬼道が、伏せていた瞼を押し上げる。普段よりも濡れた瞳に見つめられて、それだけでぞくりと背に快感が走った。
 一方的に脱がされるのが嫌で、鬼道も豪炎寺のシャツに手を伸ばす。まだキスしかしていないというのに、久しぶりの深いキスはそれだけで鬼道の内に眠る快感を引き摺りだし、ボタンを外す指先が震えた。
 上手く外せなくて眉根を寄せる鬼道に、口唇を離した豪炎寺は小さく笑みを零し、諌めるように眉間に口づける。
 そんなところに触れられるなんて思ってもいなかった鬼道は、パッと顔を赤らめて、ボタンに手をかけたまま、ぎゅっと豪炎寺の胸許に顔を押しつけた。
「鬼道」
 代わりに無防備に曝された耳朶を優しく舐める。
「っ……」
 小さく漏れた声に満足げに笑うと、豪炎寺はそのまま耳の中に舌を差し入れた。
「やっ」
 ぴちゃぴちゃと直に鼓膜を揺らすような水音に鬼道は両手でぎゅっと豪炎寺のシャツを握りしめたまま、堪らず声を上げる。
「それだと脱がせられない」
 実際にはボタンは残り二つ程度だったので、脱がそうと思えば、腕を完全に抜くことは無理でも大きく肌蹴させることは十分可能だったが、別に拒否されているわけではないと知っていても、鬼道の同意なしに勝手に進めるつもりはなかった。
「それとも」
 腰を支えていた手をそろりと下にずらし、スカートの下に潜りこませる。
「着たままがいいのか?」
 パンツに手をかけたのが分かったのか、鬼道が焦ったように勢いよく顔を上げた。
「バカっ」
「着衣エッチもエロくていいかもな」
 赤い顔をしていては口調の悪さも照れ隠しにしか聞こえない。にやりと笑って、豪炎寺は結局残りのボタンを外さないまま、鬼道のシャツを脱がせにかかる。
 首筋に顔を埋め、舌を這わせていく。
「あっ……ん」
 鬼道の身体を静かにベッドマットの上に押し倒す。質のいいスプリングは二人分の体重を受けても軋むことなく静かに沈む。
「シャツばかり掴まれてるのも少し複雑なんだが」
 相変わらずぎゅっと掴んだままの鬼道の手許に視線を落とし、言葉そのままの複雑そうな表情で口にした豪炎寺に、鬼道の口許が緩む。変なところで子どもっぽい、そんな豪炎寺の姿を知っている人間など、付き合いの長い雷門イレブンのメンバーですらほとんどいないに違いない。
「そんなにしっかり握りしめていられると、オレよりシャツの方がいいのかとさえ思えてくる…」
「バカ」
 少しだけ呆れたように、けれどもその口調も表情も柔らかいまま、鬼道は、豪炎寺の首に手を回し、その身を引き寄せる。鬼道を押し潰さないように身体の両脇に手をついて身体を支えた豪炎寺に構わないというように鬼道は笑みを深めると、今度は自分から口唇を寄せた。
「そんなの考えるまでもない。おまえの方がいいに決まってる」
 少しだけ照れたように笑うと、鬼道はキスを強請るように口唇を押しつけた。
「ふっ……」
 どちらからともなく漏れる吐息。
 ぷるんとした口唇の感触をたっぷりと味わってから、口内を蹂躙するように蠢く鬼道の舌に豪炎寺も負けじと舌を絡ませる。舌の裏のざらりとした部分を舐めあい、そして再び絡まる互いの舌。
 口中に溢れた唾液は重力に従って、鬼道の口内へと流れこむ。咽喉が大きく上下するものの飲みきれなかった分が口の端から溢れ、肌を伝っていく。たらりと皮膚を伝う様子は酷く艶めかしかった。
 キスを交わしながら、豪炎寺はそろりと片手を鬼道の肌の上で滑らせる。ブラジャー越しに立ちあがりかけている乳首を指先で弾くと、咽喉の奥でくぐもった声が上がった。
 口唇を離して見下ろすと、快感に潤み始めた瞳が豪炎寺を見上げた。
「……だ」
 躊躇いがちに発せられた声に、豪炎寺は口許を歪める。鬼道が何を欲しているか知っていながら、此方からは助け舟を出すつもりはなかった。
「豪炎寺…」
 鬼道の視線が、豪炎寺と自分自身の身体と天井の間を彷徨う。
 何かを言いかけては、もごもごと言葉を呑みこんでしまうのを豪炎寺は楽しげに眼を細めて眺めた。
「なんだ?」
 気づいていないはずはないのに、あくまでも自分が言いだすまで行動に移すつもりはないのだろう。肌を重ねるようになって知ったことは、ベッドの上の豪炎寺は少しだけ意地悪だということだった。
「それ、」
 嫌だ。
 鬼道はぎゅっと目を閉じて懇願するように口にする。
「それって」
 けれども、豪炎寺の口から返される言葉は無慈悲にも鬼道にさらに続きを要求する。
「どれだ?」
 言外にはっきり口にしなければ、希望を聞きいれる気はない、と告げられて鬼道が一瞬、恨みがましそうな視線を豪炎寺に向けたが、ここは素知らぬふりをする。どこまでも、それこそ砂糖菓子のように優しく鬼道の羞恥心を取り払うように抱くときもあったが、今日は無理だった。自分ばかりが鬼道を欲しているのが悔しくて、鬼道にも自分と同じところまで落ちてきて欲しくて、ついつい意地悪を言ってしまう自分を豪炎寺は自覚しながらも止められない。
「直接、」
 触ってくれ。
 ブラジャー越しに与えられるじれったい刺激では物足りない、と鬼道は恥ずかしげに、けれども強い快楽を欲することは止められず、強請るように豪炎寺を見上げる。
 鬼道の言葉に豪炎寺は楽しそうに口唇の端を持ち上げると、求められた通り、鬼道のブラジャーに手を伸ばした。飾り気の少ないシンプルな下着は、鬼道らしいと言えなくもなかったが、豪炎寺としてはもう少し色っぽい下着を身につけても良いんじゃないかと常々思っていたが、口にしたことはない。
「鬼道」
 豪炎寺の声にのろのろと鬼道が身体を起こした。
 背に回された豪炎寺の指先がホックを外した瞬間、押さえつけられていた形の良い乳房が、ぷるんと震える。人より少し大きめの豪炎寺の掌で片手に余るサイズのバストは、鬼道はあまり好きではないらしく普段はワンサイズ小さいブラジャーに押しこめていた。形が崩れるからサイズにあった物を着けろと言ってもそれは譲れないらしい。
 つんと立ち上がった乳首を豪炎寺が舌先で舐めた。
「ぁっ……」
 甘い声が上がるのに気をよくして、一方を舌先で転がしながら、もう一方の尖りをきゅっと摘み上げる。
「やぁっ」
「嫌じゃないだろ」
 くすりと笑って、唾液で濡れた乳首にふっと息を吹きかけると、ひやりとした感覚に鬼道がむずかるように首を振る。
「こっちもすっかり濡れてるな」
 その様子に笑みを深めながら、豪炎寺がスカートの下に手を這わせると、予想通り下の割れ目はすっかり愛液が溢れているようで、濡れそぼった下着を揶揄するように、濡れて糸を引く指で口唇をなぞった。
「んっ……」
「まだ触ってもいなかったのにどうしてこんなに濡れてるんだ?」
 にやにやと笑う豪炎寺を鬼道は悔しげに睨みつけたが、濡れているのは事実であり、それを突きつけられては反論の仕様がない。
「期待してたのか?」
「……」
 ぐっと口唇を引き結んで顔を逸らす鬼道の様子に豪炎寺の中の支配欲がむくりと顔を擡げた。
「鬼道」
 下着の上から擽るように微かな刺激を送ると腰が勝手に揺れるのを見下ろして、もう一度、鬼道、と名を呼んだ。
「言わないとこれ以上はしない」
 その言葉に鬼道がはっと豪炎寺の方を向いて、即座にしまったという風に再び顔を背ける。
 実際には豪炎寺自身、今すぐにでも猛る自分のモノを鬼道の中に突きたてたくて仕方がなかったが、表面上は何でもないことのように必死で振舞った。
「おまえは」
 引き結んだ口唇を悔しげに開くと鬼道は、きっと豪炎寺を睨みつける。
「意地悪だ」
 普段であれば、大抵の人間を押し黙らせることのできる鬼道の鋭い眼差しも欲に浮かされた状態では、威力はほとんどない。
y 「でも、そんな意地悪な男が好きだろう?」
「っ……」
 豪炎寺の言葉にぱっと朱が散ったように鬼道の頬が染まる。
「鬼道……?」
「好き、じゃない」
「鬼道?」
 顔を背けて鬼道が悔しげに、嘘だ、と力なく零した。
「好きだ」
 二人の声が重なり、鬼道が弾かれたように豪炎寺を見る。
「鬼道が好きだ」
 きっぱりと断言した言葉に鬼道が驚きの表情で豪炎寺を凝視した。信じられないといった様子に豪炎寺の胸がちくりと痛む。
「悪い、意地悪した」
 ぎゅっと鬼道の身体を抱き寄せると、すまない、ともう一度耳許で囁いた。
「……もう、いい」
 豪炎寺の背に腕を回し、こつんと額を胸に押し当てる。すっかり乱された鬼道と違って、豪炎寺は制服の上着を脱いだだけのシャツ姿だったが、布地越しに感じる肌からは平素よりもじわりと熱い体温が感じられて、興奮しているのは自分だけではないことにホッとした。
「オレも」
 見上げた双眸が豪炎寺を映す。
「好きだ」
 鬼道の言葉に豪炎寺も表情を綻ばせた。

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