N.W.D -稲妻11別館-


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駅弁は腰を痛めるのでおススメしません。


 ギュッギュッと豪炎寺の突き上げに呼応して皮張りのソファが鳴く。
「ん、あっ……」
 鬼道が堪らないという風に頭を振るたびに、解かれた髪が広がり、波打った。
「ご、えんじ」
 潤んだ瞳が下から豪炎寺を見上げる。
 鬼道の片足はソファの背に掛けられ、豪炎寺の手をしとどに濡らした性器が二人の身体の間でふるふると震えていた。
「も、う……」
 イかせて、と泣きだしそうな声で訴えられて、豪炎寺は理性を焼き切るような衝動に身を任せる。
 指で作った輪を上下に大きく動かして鬼道の前を扱きながら、腰を激しく前後させた。鬼道の負担が少しでも減るようにたっぷりと垂らしたローションがぐちゅりと音を立てるのも聴覚への刺激となるのか、パンパンと打ち付けるように豪炎寺が腰を振るのに合わせて、鬼道の口から引っ切りなしに嬌声が上がる。
 その声にさらに豪炎寺が煽られた。
 どうしようもない。
 本当にどうしようもなかった。
「んぁっっ!」
 ぎり、と尿道口に豪炎寺が爪を立てたのを合図に鬼道が甲高い声を上げ、全身を大きく震わせた。ピンと足の爪先を突っ張らせたのと同時に中がぎゅっと締まり、豪炎寺はうっと小さく唸る。脳裏が真っ白になる感覚に逆らうことなく、精液を中に吐き出すと同時に、鬼道の中に覆い被さるように倒れこんだ。
 二人して全力疾走した後のように、言葉もなく荒い呼気だけが辺りに満ちる。
 口から漏れる息さえも熱い気がした。
 どちらも無言で互いの体温に身を委ねる。
 少しだけ余韻に浸るように息が落ち着くのを待って、豪炎寺が身体を起こそうとしたとき、腹に鬼道の出したものがねとりと広がった
 気持ち悪いというように顔を顰めた鬼道が、重い、とさっきまでの痴態なんて嘘のような冷静な声で文句を言うのに少しだけムッとして顔を上げた豪炎寺だったが、口調とは裏腹に目を合わせようとしない鬼道の頬はほんのりと色づいていて、結局、くすっと口許を緩めてしまう。
「重い」
 豪炎寺が笑ったのが分かったのか、顔を背けたままの鬼道がむすりと口唇を尖らせて、もう一度文句を口にする。
「そんな味気ないこと言うな」
 豪炎寺は苦笑しながら、内壁を擦りあげるように中に挿れたままの自身をゆるりと動かした。
「あっ……」
 思わず声を上げた鬼道は慌てて両手で口を抑えたが、豪炎寺はにやりと口許を歪めて、さらに緩く抜き差しを繰り返す。
「バッ、バカ」
 慌てて上体を起こした鬼道だったが、その動きが原因で中がきゅっと締まる。
「きっ、鬼道!」
 流石の豪炎寺も焦ったように眉根を寄せたが、既に中で再び膨らんでしまったモノはどうすることもできない。非難がましい鬼道の視線にも男として自然な反応だと開き直った。
「さっさと抜け」
「こんなになってるのに無理言うな……」
 ぐいと腰を押し付けるように豪炎寺が身を揺すると、鬼道がくっと息を詰めた。同じ男としては、酷いことを言っている自覚はあったが、だからと言って素直に了承するのも納得がいかない。
「このまま」
 構わないか?
 止めるつもりなど一切ないくせに、と腹立たしく思いつつ先刻の刺激のせいで、鬼道のモノも再び力を取り戻してしまい、ゆるゆると勃ち上がってしまっているのは誤魔化しようがなかった。豪炎寺も当然それに気づいているからこその強気発言だ。
 豪炎寺だけでなく、はっきりと拒絶できない自分も腹立たしい。
 諦めたように息を吐き出して上体を起こすと、鬼道は身体を預けるように肩に額を押し当てた。
「鬼道……?」
「ベッドがいい」
 ソファは嫌だと言外に告げる意図に気づかぬ程、鈍感ではない。
 豪炎寺はくすっと小さく笑みを零し、鬼道の腕を自身の首に回させると、豪炎寺?と鬼道が怪訝そうに名を呼ぶより早く、足と腰に力を入れて立ち上がった。
「バッ……っ!」
 驚きの声は、姿勢を変えたことによって生じた中を突く刺激に飲み込まれる。
「鬼道っ」
 咄嗟のことに首に回した腕に力が入ってしまい、逆に豪炎寺が焦りの声を上げた。
「ちょっと」
 力抜け。
 けれども、そんなことを言われてもどうしようもない。不安定な体勢に肩に顔を埋めてしがみついたものの、腰に回した自身の足による締め付けと自重のせいで、普段感じたことのない奥まで豪炎寺のモノを飲み込んでしまい、口を開いたらみっともない喘ぎ声が溢れそうでぎゅっと口唇を固く噛み締めた。
 腕だけでなく足までも腰にがっしりと巻きつけられて、豪炎寺は苦笑する。
 聞くと見るでは大違いとよく言うが、確かにこれはキツいと正直思った。けれども、しっかりと自分に抱きついている鬼道の姿が可愛いから、これはこれで十分に楽しめる。
 慎重に一歩踏み出すと、その些細な振動も刺激となるのか、肩口で鬼道が声を噛み殺すのが分かった。
「鬼道」
 手を回す余裕はなかったから、頬を髪に擦りつけるように寄せる。
 柔らかな感触が気持ち良い。
「あんまり噛むな」
 口唇が傷つく。
 咎めているようでもあり、労わっているようでもある言葉に、確認せずともどんな表情をしているかは容易に想像がついて、けれども鬼道は小さく嫌々をするように頭を振った。
 頬に触れる髪が緩やかにさざめいて擽ったい。
「我慢できなかったら、オレの肩にしろ」
 それも聞き慣れた言葉で、そんな風に言われて、はいそうですか、と噛みつけるわけがない。しかし、豪炎寺の気遣いが嬉しくないわけではなくて、躊躇いとともに薄く口唇を押し開けた。
「だったら……」
 早く連れていけ。
 髪が長くて良かったと思う。
 きっと真っ赤になっているであろう顔を隠してくれているに違いないと思いながら、鬼道は口調だけは偉そうに、けれども顔を上げることなく、そう口にした。
「了解」
 そんな鬼道の強がりに気づかぬはずもなかったが、豪炎寺はそれ以上、からかいの言葉を口にするでもなく、促されるまま、寝室へと慎重に歩を進めた。
 正直、自分もあまり余裕はない。
 逸る気持ちを抑えながら、豪炎寺は必要以上に揺らさぬように寝室へと急いだ。

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