N.W.D -稲妻11別館-


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純情Days 15


 季節外れということもないのかもしれないが、暦の割には鋭い陽光にゴーグルの下の目を細め、鬼道は太陽から身を隠すように袖にかかるマントごと腕を持ち上げた。
 連休明けの練習は、普通なら普段よりもみっちりとなるところだが、連日の練習試合に息つく暇もなかった雷門イレブンは、放課後、いつも通りのアップを済ませたところで、監督からの伝言だ、と夏未から数日ぶりの休養を言い渡されていた。
 こんなにいい天気なのに練習禁止なんて、と不満げに口を尖らせた円堂も夏未に説教され、秋と冬花に諭されれば、流石に無理を言うのは諦めたらしい。
 風丸に引きずられるように家路についた背中を見送ってから、鬼道は豪炎寺と顔を見合わせて互いに、くすりと顔を綻ばせた。
 オレたちはどうする、と視線で問いかけた鬼道に、豪炎寺が、ん、と考え込む。
 特訓禁止なのはキャプテンだけじゃないんですからね、と腰に手を当てた春奈に言われたのを思いだして、うちに来るか、と誘うように豪炎寺は小さく口許を緩めた。
「借りてたDVDも返したいしな」
 その言葉に鬼道が呆れたように笑う。
「わざわざ口実を作らなくてもいいのに」
 ニヤリと歪められた口唇に、豪炎寺がバレたか、と小さく肩を竦めると、だったらと言葉を続ける。
「一緒にいたいんだ」
 鬼道、と耳朶に触れんばかりの距離で落とされた囁きに、最初からそう言え、と鬼道が笑みを深めた。
「まあ、駆け引きも嫌いではないが」
 軽く肩を竦めてから、こう暑いとまどろっこしいのは面倒だ、とらしくない表情で豪炎寺を見た。
「そうだな」
 頬を撫でる風は心地良かったが、降り注ぐ直射日光は真夏をおもわせる鋭さで、これがボールを追いかけているときならば、まだ気にならなかったかもしれないが、ただじっと立っている身には堪えた。
 あ、と豪炎寺が何かに気づいたように、ちょっと待ってろと駆け出したのをぼんやり見送って、視界の先に見慣れたコンビニエンスストアを発見した鬼道は、ああ、と一人納得する。
 先に店に入った豪炎寺の姿は探すまでもなく、冷凍棚の前にいて、真剣な表情で物色している豪炎寺の脛を鬼道は軽く蹴った。
 痛い、と不満げに振り返った豪炎寺に、本気で蹴ったわけではない、と鬼道が憮然とした表情で返す。
「一人で勝手に行くからだ」
 責めるような視線に、豪炎寺は、すまない、とあっさり白旗を揚げると、すぐに選んで戻るつもりだったんだ、と眉を僅かに曇らせた。
「それでいい」
 豪炎寺の横にぴたりと並んで鬼道が示したのは、二本入りのアイスで、豪炎寺は弾かれたように横を振り返って、なんだ、と恥ずかしそうに頬を赤らめた鬼道と目が合った。
「いいや」
 オレもこれにしたかったんだ、と目を細めた豪炎寺に、照れ隠しのように鬼道がもう一度緩く足を蹴る。
 本気ではないことなんて豪炎寺にだってお見通しでけれども素直ではない鬼道の甘えるようなじゃれあいに、自然と口許が緩んだ。
「ニヤニヤするな」
 ふい、と顔を逸らせるとすたすたと店の入り口に向かう鬼道の背に声をかけながら、豪炎寺は慌てて、支払いを済ませるべくレジに向かう。
「おいていくぞ」
 自動ドアの一歩手前で足を止めた鬼道が振り返った。

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