N.W.D -稲妻11別館-
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Clap純情Days 4
「なんだ、それは……」
呆れを隠さない鬼道の口調に豪炎寺は少しだけ口唇を尖らせる。
「うまい棒だ……鬼道、知らないのか?」
袋いっぱいに詰め込まれた駄菓子にちらりと視線を向けて、それは知っている、と鬼道は溜息とともに吐き出した。
「そういう意味ではなくて、どうしてそんなに大量に、」
という意味だったんだが、と鬼道が目を細めたのと、冗談だ、と言った豪炎寺の言葉が重なる。
「ゲーセンで取った。半田たちに一緒に連れていかれた……鬼道が先に帰ってしまったから、誘いを断れなかった」
ああ、と鬼道は納得したようにもう一度中の透けたビニール袋に顔を向けた。
「悪かったな、一緒に帰れなくて」
マネージャーである春奈に頼まれて次の対戦校への偵察に付き合うことは、豪炎寺も当然知っていたし、それに対して不満があるわけではなかったが、少しだけ恨み言のような言い方になってしまったのは仕方ない。少しでも一緒にいたいと思う正直な心に嘘はつけなかった。そんな豪炎寺の心中に気づかぬ鬼道ではなかったし、何より鬼道自身も豪炎寺と一緒にいられなかったのを残念に思っていたのも事実だったから、するりと詫びの言葉が零れ落ちた。
「オレはやったことがないが、普通はそんなに取れるものなのか?」
「オレも初めてだったから詳しくは知らないが、半田の言い方だとそんなことはないらしい」
「そうか……だったら、ビギナーズラックか、そうでなければおまえはUFOキャッチャーというんだったか、あれの才能もあるということだな」
くすくすと笑う鬼道に、豪炎寺ははぁと溜息を吐く。
「別にそんな才能があってもな……」
無雑作に袋の中に手を入れて、一つ掴むと、鬼道に向けて放り投げる。
「とりあえず、今日からしばらく付き合ってくれよ」
これ、消費するのを、と少しだけげんなりしたように言った豪炎寺に鬼道はおや、と首を傾げた。
「なんだ、嫌いなのか?」
「そうではないが、流石にこれだけあると飽きそうだ……」
一日一本食べたとして、優に二週間は持ちそうな量に確かに、と鬼道は苦笑すると、豪炎寺の左肩にぽんと右手を置く。
「急いで食べないと悪くなるようなものでもないだろうから、気長にたべればいいさ」
「それもそうだな……」
少しだけ表情を和らげた豪炎寺が、一つ目の袋をびりりと開けて中身に歯を立てたのを見て、鬼道も手渡された包装に手をかけた。
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