N.W.D -稲妻11別館-


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純情Days 2


「なんだ、これは……?」
 机の上に無雑作に放り出されていた一冊の雑誌に視線を落として首を傾げた鬼道に、遅れて部室に戻ってきた豪炎寺がくすりと笑みを漏らした。
「そういえば、鬼道はさっきいなかったな」
「?」
 表紙を飾っているのは今人気の女性歌手グループで、鬼道も顔ぐらいは知っていた。
 しげしげと雑誌を見ている鬼道を横目に見ながら、豪炎寺はさっさと汗だくのユニフォームを脱ぎ始める。
「練習前にマックスたちが、誰が一番可愛いか話してたんだ」
 マックスたちというと、あとは半田と一年生たちといったところか、と鬼道はパラパラと雑誌を捲っていく。
 練習が終了したのはもう随分前で居残り練習につい夢中になってしまった結果、他の皆はどうやらとうの昔に帰宅してしまったらしい。これはどうやら忘れて帰ったのだろう。
「鬼道は、誰だ?」
「……は?」
 バッグから取り出した新しいTシャツから頭を出した豪炎寺が、にやりと笑う。
「どの子が一番好みかってことだ」
 その言葉に、鬼道はもう一度、閉じた雑誌に視線を落とした。
「誰と言われてもな……」
 顔ぐらいしか分からないのに好みと言われても、正直よく分からん、と苦笑されて豪炎寺はやっぱりな、と笑った。
「鬼道ならそういうと思った」
「だったら、おまえはどうなんだ」
 バカにされたわけではないと分かっていても、やっぱりと言われると胸中を見透かされているような気がする。少しだけ腹立たしくて、鬼道はむっとしたように豪炎寺を見返した。
「オレか?」
「ああ」
 だが、思わず口にしてしまったものの正直なところは聞きたくないというのが本音で、鬼道は豪炎寺の視線から逃げるように、着替えるためにバッグを開いた。
「気になるか?」
 余裕を滲ませた声がさらに鬼道の腹立ちを煽る。
「……別に」
 少し乱雑に脱いだユニフォームを畳む手。さらには、明らかに嘘だと分かるその口調に豪炎寺の口許が緩む。
「鬼道が一番だ」
 マントの紐を留め直すのを待って、身体をぎゅっと抱きしめた。
「っ!」
 鬼道の身体がぎくりと強張る。
「鬼道が一番可愛いに決まってるだろ」
「バッ……離せ!」
 強く抱きしめる腕の中で真っ赤になった鬼道が身を捩ったが、拘束する腕は弱まるどころか一層強まるばかりだった。
「……可愛いとか言うな」
 観念したように豪炎寺の腕をぎゅっと握ると、ぽつりと零す。
「でも、」
 オレもおまえが一番だ。可愛いとかそういうのはよく分からないけど、おまえが一番だ。
 そう口にした鬼道の顔はこれ以上ないぐらい真っ赤だったが、抱きしめる豪炎寺の腕もいつにもまして熱くて、きっとその頬も赤くなっているのだろうと分かったから、素直にその胸に背を預けた。

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