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どうやら私のクラスの担任の先生は話が長い方のようで、部活動初日にも関わらず終礼が遅れて絶賛遅刻中である。気を付けて帰れよー、じゃないよ帰んないよ部活だよ先生!!
「遅刻とか………殺される!!!」
「マネージャーが遅刻など言語道断なのだよ」 「橙乃は今月だけでもこれで3回目だね。外周、行っておいで」 「ええ!?私マネージャーな」 「何か言った?」 「いってきまァァァす!!」
「っ無理無理絶対無理!!!」
高校入ってまで外周なんて死んでも御免だ!いや死にたくはないけど! 青くなっているだろう私の顔にすれ違う人達がぎょっとこちらを凝視している…が、そんなことを気にしている場合じゃない。底辺並みの運動神経を駆使して廊下を走り抜ける。少ししか走っていないのにもう息が切れて来た。「おいそこ!廊下は走るな!」「イエッサー!ごめんなさい!!」…怒られた。 …あ、よかった!体育館が見えた!!
「お、お、遅れました!!!」
ガンッ!!と体育館の入り口を開ければ、その音に驚いたのか無数の目がこちらに向けられる。 ……って、アレ?
「…えっと…君…誰?」 「え?あれ、バスケ部……あれ?」
目の前にいるのはどう見ても卓球部の方々で、バスケ部じゃない。監督さんも、眼鏡先輩も、他の人たちも見当たらない。バスケットゴールも出されていないし……え、ここ体育館だよね?もしかしてもう活動終わったとか?それと同時にお前の人生も終了したってか?冗談じゃない勘弁してくれ。
「ああ、バスケ部なら第一体育館だと思うよ。ここは第二。でも、一年生のクラスからは第一の方が近かったはずだけど…」 「な、なんと…!?そうでございましたか!すみません、お手数おかけしました!!」 「え、あ、そっちは第一の方向じゃ……行っちゃった」
第一とか第二とか、なんだって体育館を別の場所に設置するんだ!!もう!!!お陰様で初日からもうばっちり遅刻だ。外周?外周か?…てかここどこ!? …あれ、もしかして迷った?
…しまった。 玄関に行く方向もわからない。 これもしかして帰れないとかないよね?大丈夫だよね?というか流石新設校。広いね? もう数十分は校内を歩いたけど、そこんところどうなんでしょう?あはっ誰も答えてくれない。
「…あれ、橙乃さん?」 「はっ!眼鏡先輩!!」 「眼鏡って…あ、でもそっか。まだ自己紹介してないもんな。日向順平、一応主将やってる。これからよろしくな」 「ヒュウガ先輩ですね!主将!一生ついて行きます!」 「お、おう。今日来てなかったけどなんかあった?」 「迷いました!」 「潔いなオイ」 「潔さだけは誰にも負けません」 「…まあ今日は顔合わせみたいなもんだったし、詳しい仕事とかは明日から頼むよ」 「先輩優しい!感動しました!!」 「え、そう?普通じゃね?」
こんな有難い気遣いを普通と言ってくれるとは…なんて優しい人なんだろう!どうやら外周はしなくてもいいらしい。…でも本当はそれが普通なんだよね、知ってた。 一度校内を迷ったのだという節を説明した時に物凄く怒られた記憶があるから怖かったけど、ヒュウガ先輩はどうやらそんな人ではなかったらしい。神様かよ。…別の意味で神様超えていた某赤い人だったら間違いなく走らされてる。あ、なんか涙出てきた。ていうか部活、終わったんだ。私どんだけ迷ってたんだ。どんだけ〜!
……。
「…橙乃さん、あのさ」 「あ、橙乃でいいですよ」 「おおそっか、橙乃な。…なぁ、黒子テツヤって…知ってる?」 「ああ、黒子テツヤねーうんうん…ん?……黒子ぉ!?」
先輩の肩をがっしり掴んで揺らせば頭を叩かれた。痛い。なにこの既視感。 …ってそれよりも今この人、黒子って言った?
「やっぱ同じ帝光出身だし、知り合いか」 「…え?ちょっと待ってください。黒子くん、この学校なんですか?」 「ああ。バスケ部、来たけど」
なんと。 黒子くんが誠凛バスケ部に!
「そ、ですか…また黒子くんのバスケが見れるんですね」 「…?」 「…あ、いえ。仲良かったんです。私たち」
これはちょっと、いや凄く楽しみかもしれない。
(…そういえば先輩、私体育館まで1人で行けません) (あ、じゃあ俺迎えに行くわ。仕事も教えないとだし) (何それ!惚れる!!) (……扱いに慣れてきた)
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