三つ葉のクローバー | ナノ
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「何?結局全面使うの?」
「ゴールぶっ壊した奴がいんだってよ!」
「はあ?…うお!マジだよ!!」

ネットや要らないゴールが片付けられ、今度こそ全面になる。広くなったコートに満足して背伸びをすると後ろから誰かに膝裏を押されてぐにゃんと床にヘタリ込んでしまった。誰だ!…あ、カントク。

「…アンタ、狙ってた?」
「…まさか。タイガくんのスーパープレーですよ」
「……伊達に帝光の一軍マネージャーしてなかったってわけね…」
「ええっ、見直しました!?」
「うっさい黙っとけ!」
「ぐへっ!?」

ばしん、と叩かれた頭に理不尽だと暴れるともう一度手が出たので大人しくしておいた。

「確かにありゃギャフンっスわ。監督のあんな顔初めて見たし」
「人ナメた態度ばっかとってっからだ つっとけ!」
「…それはサヤカっちの言葉っスか?」
「フン、アイツだったらもっと言うんじゃねーの」
「っはは、否定はしないっス」
「火神くん…ゴールって…いくらするんですかね?」
「え!?あれって弁償!?」
「ええ!?そうなの!?」

黒子くんの言葉に思わず立ち上がると監督に座れと怒られた。でも弁償だったらどうしよう。タイガくんと割り勘か〜…高そう…
あちらの監督に呼ばれたキセくんを横目に自分の残高を思い浮かべる。…おお、これはやばい。金欠だ。

「それでは、試合再開します」
「やっと出やがったな…」
「スイッチ入るとモデルとは思えねー迫力だすなオイ」
「伊達じゃないですよ。中身も」

キセくんの登場に空気が一気に重くなる。彼の凄いところはスイッチの切り替えだ。色んな顔を持っているキセくんは、ある意味彼等の中ではずば抜けてなんでもできる人かもしれない。シャララなくせに器用だからね。例えばモデルだったり、バスケだったり。それから…

「キャアア黄瀬クーン!!」
「テメーもいつまでも手とか振ってんじゃねーよ!!!」
「いてっスイマッセーンっっ」

シバかれてる時(通称犬)だったり。
ギャラリーが多いのは変わっていないみたいだけど、それを気にせず彼に肩パンをする海常の主将は強い。「肩パンされてる黄瀬くんも可愛い〜」とか聞こえるから世も末だ。何をしてもカッコいい可愛いで片付けられちゃあ堪ったもんじゃない。大変だなキセくんも。
ホイッスルの音と共にキセくんにボールが渡れば、もう彼の頭にはバスケ以外何もないのだけど。

「こっちもアイサツさせてもらうっスよ」
「…マズいな」

ガシャッと妙な不協和音と共にキセくんが決めたダンクに体育館中がどよめく。
…ただ相手の主将は満足していないらしく相変わらずキセくんに蹴りを入れている。
…今の威力は、タイガくんよりも上だった。真似っ子とはよく言ったものだ。…成長してるな。前とは比べものにならないじゃないか。

「女の子にはあんまっスけど…バスケでお返し忘れたことはないんスわ」
「上等だ!!黒子ォよこせ!!!」
「やべっ」

今度はタイガくんがダンクを決める。

「これが…『キセキの世代』同士の衝突…!!!」
「キセくん以外の4人も相当ですね。あの〜カントク」
「…どうかした?」

タイガくんがダンクをすればキセくんもダンクで返す。後ろにフェイダウェイすれば、同じく更に上のキレでキセくんが後ろにフェイダウェイする。試合が始まってからまだ3分。

「…タイガくんの頭を一度冷やした方がいい気がします」
「…アンタもさっきまで相当だったでしょ」
「いや私はまだ怒ってますよ。全然頭冷えてないです。でも、問題はそこじゃない」
「……!つまり…」
「タイガくんがムキになればなるほど、更にキレを上げてキセくんは返してきます」
「TO、取ってくる」
「…はい」

カントクがそう言ってベンチから立ったのを見て、私も立ち上がる。スコアの記入は任せちゃったけど…本来の仕事もちゃんとしないといけないからね!タオルとドリンクを持ってベンチの横にスタンバイする。
こんなハイペースで進む試合を見たのは久し振りだ。目で追っていても頭が追いつかない状況。プレーをしている選手達はもっとだろうから、反射神経で対応するしかない。…つまり、黒子くんのミスディレクションも効果を失いつつあるということだ。

「誠凛、TOです」
「はいこれタオルです。汗かいた分だけ水分とってくださいね…って言っても凄い汗だあ」

ドリンクを渡していくのはいいけど、みんなすっかり息が上がっていてとても話せる状態じゃない。

「なんだこのていたらくはお前ら!!」
「うわっ!?」
「何点取られりゃ気がすむんだ DF寝てんのか!?オイ!」
「…フン」

相手側の監督の怒声に鼻を鳴らせばヒュウガ先輩にこら、と怒られた。ごめんなさい。

「とにかくまずは黄瀬君ね」
「火神でも抑えられないなんて…」
「もう一人つけるか?」
「なっ…ちょっと待ってくれ…ださい!!」

ださい…?と首を傾げる一同だけど、私は黒子くんの前にしゃがみ込んだ。黒子くんの顔を覗き込むと、彼も少し困った顔をする。ああやっぱり、そりゃ自覚あるよね。

「…どう?」
「もう既に、効果は薄くなっているかと思います」
「……だよねぇ」
「効果?って?」

コガ先輩の声にいつの間にか視線は私達二人に集まっていた。その目には期待と不安の両方が込められている。

「彼には弱点がある」

…なにか。この状況を打開するためのなにかを見つけなければならない。


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