三つ葉のクローバー | ナノ
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From:カントク
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海常高校と練習試合組んだからスケジュールの確認とかヨロシク♪
あといい加減体育館の場所と部員の名前覚えなさい走らせるわよ




「うげっ…」

ニッコリと微笑んだカントクの顔を思い出して口元が引き攣る。そんな私は今も絶賛迷子中なわけで、それを見透かしたかのようなメールに嫌な汗が噴き出る。もしかしてあの人もエスパーだったりするのか?…いやそんなことよりも今は1秒でも早く体育館に行かなければ。やっぱりどこに行っても私は走らされる運命らしい。何度も言う、私はマネージャーである。…いや、マネージャーが体育館に辿り着けなくてどうするんだって話なんですけどね。

なんだか今日は女の子が密集しているところに来てしまったらしい。慌てて引き返そうにもどこに行けばいいのかわからず、結局私はいつも通り途方に暮れていた。

「黄瀬くんかっこよかったねー!」
「サインくれたしめっちゃ優しかったっ」

きゃっきゃと顔を赤くしている女の子たちに首を傾げながらも取り敢えず歩き回る。キセ…ってどこかで聞いたことあるような気がしたけど誰だったかな。
まあいいやそれよりも体育館を探そう。
今日は確かに部室から出たはずなのにどうしてこんなに女の子がいるところに来てしまったんだろうか…
大きく溜息を吐いた時、視界の隅にどこか懐かしい黄色が見えた気がした。

「…っあ、あった、体育館」

小走りでそっと入り口に近づく。散々迷った理由がわかった。女の子たちによって入り口が隠されていたことと、人が密集していたそこが私の記憶に無い景色に見えてしまったからだ。だっていつもは体育館の周りなんて人っ子一人いないんだもん。仕方ない。そう、これは仕方のないことなんです。

「スミマセン遅れました!!」

だから許して!!と祈りながら恐る恐る体育館に入ると、そこはいつもと違う異様な雰囲気に包まれていた。…え?私のいない間にまた何かあったの?タイガくんと黒子くんどうしてそんなに見つめあってるの?
しん…と静まり返っている部員たちに近づいてドリンクの入った籠を降ろす。なんかよくわかんないけど、これは怒られないチャンスなのでは…!?

…と、思った時期が私にもありました。

「コラサヤカ!!アンタドリンク取りに行ってからどんだけ時間経ってると思ってんの!!!」
「…橙乃、いい加減迷子はよせって」

全然いつもと同じだった。鬼の形相で追いかけてくるカントクから逃げ回っていると今度はキャプテンに正面から捕まえられ、正座をさせられる。カントクとキャプテンの連携が日を追うごとに増している気がする。これはまさにチームワークの向上!?私ってばチームの役に立っている!!「いいから黙れ!」「ぎゃんっ!」何も言っていないのに!!

「はぁ…でもまぁ、いつもに比べれば早い方かもね。アンタが頑張ってるのは知ってるし、今日は許してあげる」
「か、カントク…!!」

思わず目を輝かせてカントクを見上げると、カントクは眉を下げて笑っていた。
なんていい人達なんだろう…!!そして可愛い!!

「…オイ、サヤカ」
「ん?どうしたのタイガくん」
「……オレはぜってぇ、キセキの世代には負けねぇ」
「?知ってるよ?」

立ち上がってモップがけでもしようかと思っていると、不意に掛けられたタイガくんの言葉。なんか凄く怖い顔してますけど…本当にどうしたの?当然だろうと言う私の返答に満足したのか、タイガくんはボールを片手にドリブルで行ってしまった。

「…何があったのかな」
「さっき黄瀬くんがここに来ました」
「ぎゃっ!?…ああ黒子くん」

いつの間にか隣に立っていた黒子くんにお決まりのリアクションをしつつ、タイガくんを見遣る。その、キセクン?と何かあったのかな。首を傾げていると隣で小さく溜息を吐かれた。…なんかごめん。

「…………黄瀬くんが誰かわかっていないでしょう」
「…バレた?」
「はぁ…そんなことだろうと思いました。練習試合になればわかると思います」
「あ、海常高校…だっけ」
「学校の名前は覚えられるんですね」
「…………確かに!!」
「…仕方のない人ですね」

黒子くんはそれだけ言うと練習に戻って行った。タイガくんのさっきの言葉からすれば、キセクンはキセキの世代の誰か、ということだろうか。海常高校に行ったキセキの世代ー…?
………。
だめだ。思い出せん。



「青山くん今度はね、」
「サヤカテメェ青峰だっつってんだろ。何回目だバカ」

「ムラサキクン、名前が長いよ」
「んー?じゃあ敦でいいよー」

「瀬田くん、来週の練習試合なんだけど…」
「サヤカっち〜いい加減名前覚えて欲しいっス…」
「あれ、瀬田リョータ?」
「違うっ!」




「…あぁ、瀬田くんか」

思い出してぽん、と手を叩けばそれが聞こえたのか黒子くんと一瞬目が合った。よくやった自分。なんだ、思い出せるじゃないか。「…あれ、違った?」「…………、いえ。あってますよ」今の間はなんだ黒子くん。

…でもそっか、次の練習試合は彼のいるところなんだ。まさかこんなに早く、彼らと試合をすることになるとは。
機嫌の良いカントクと、いつにも増して気合が入っているタイガくん。顔を青ざめながら3Pを打っているキャプテンや慌てる他のみんな。そして微かに見えた黒子くんの目に私の心は弾むばかりだった。

「みんな頑張れ…!」

今日ははりきるぞー!とタオルを取りに体育館を出ようとすると、キャプテンに首根っこを掴まれだアホ、と言われた。大人しくスコアの記入に徹しました。


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