"何方でしょうか"
言い様のない違和感によって、そう言いかけた口を一度閉ざした。重力に逆らう銀色の髪。剣呑な眼差しの、赤色の瞳。

「……」

今日初めて会った人物の筈だ。
(だというのに……)
"何方でしょうか"
そのたった一言が紡げない。
何故、こんなにも唇が重い。

「こんなにも綺麗な色の髪を持っていますからね」
「あーあ骨が浮き出てら……ま、何時死んでもいいように、精々間いっぱい生きろよ」


"何方でしょうか"
目の前の男はくるくるした天然パーマの銀髪で、赤い目をした――私と同じ色が、ここに。

「――――"ぎんとき"」

無意識に発した四つの音を聞いた"銀時"は、くしゃりと顔を歪ませていて。
私はそれを、彼には似合わない表情だと思った。
まるで迷子の子供のように、ひどく寂しげに立つ彼に。
手を引いて一緒に歩み、強く抱きしめて守ってやらねばならないと感じたのだ。


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