ほう、と息を吐いただけで目の前に白色が現れる。もうそろそろで本格的な冬になるだろう。
事前に気合をいれて作りまくった薪に手を出したくなるが……まだいけるか……我慢は出来る、しかし寒い……めっちゃ寒い……

「お……はよ、ぅ……」

妖怪布団被りが現れた。
足どころか顔すら見えない。息苦しいだろ絶対。

「おうおはよう、大人しく顔出しやがれ」
「……やだ」

妖怪はぷるぷると震えるばかり。動くたびに布団が床を擦り、埃や塵を回収していく。どうやらこいつは妖怪ゴミ回収も兼任していたようだ。やめろや。
無理やり剥いでやろうかと腰をあげかけるが、ぶるぶると震えが増してきた妖怪に溜息を一つ、いや二つ。

「しゃあねえな……銀時、ちょっと待ってろ」
「?」

小刻みに震える妖怪に少しばかり同情してしまうとは。
まあ、無理はよくないわな。



「あったけぇ……」
「部屋が温まったら妖怪卒業しろよ」
「よーかい?」
「布団から脱皮して人間に戻れ」
「やだ」

囲炉裏の準備をし、火種を起こしてやれば妖怪はすぐ傍に寄ってきた。だが妖怪の身分を捨てる気は一切ないようだ。

「火が飛んで布団にうつったらどうすんだ?」
「やだ」
「じゃもうちょっと後ろに下がれ」
「やだ!」
「そんなに大きく被るんじゃなくて、肩までにしろ」
「 や だ 」
「俺がこの優しさに溢れた笑顔を浮かべている間に脱げ」
「どこが?」

とても怪訝そうに俺を見る妖怪。どこをどうみても優しい優しいにっこり笑顔だろうが失敬な。お前もしかして目ん玉腐ってやがるな?


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