冬といえば、と聞かれたら何と答えるだろうか。

「あ゛ぁ〜〜生き返るわ〜〜〜」
「雪成さん、あと二つ上げるぞ」

そう、炬燵だね!良い子の皆は分かったかな?分かったに決まってるよね!それ以外の解答をしやがったゴミカス、後でお前ん家行くから。

「それだけで十分でしょう?まだ寒いのですか?」
「寒い!」
「俺も雪成もこれで良いんだよ。はい二対一で否決ー」
「何だとォ?!納得できん!裁判長、控訴します!」
「何処にもいませんよ裁判長」
「何を言っている、雪成さんだろう」
「多数決の票数に入ってる当事者なのに裁判長兼任してるんですか」
「あ、そういえばそうだな」

話の最中にこっそりと設定を2から4に変更する桂の頭を銀時がハリセンで叩く。
文句を言いながらやり返す桂。二人が動く度に炬燵ががたがたと揺れ、炬燵の上に乗った籠と蜜柑が床に落ちた。

「落ちましたよ、拾ってください」
「あ!ヅラお前一個遠くに行っちまったじゃねェかお前の所為だからとってこいよ」
「ふざけるな、銀時の所為だろう。人に責任を押し付けるな」
「お前だろ」
「貴様だ」
「どっちでも良いのでさっさと拾ってください」

一つだけ襖の近くまで転がって行ってしまった蜜柑以外を集める銀時と桂の頭をハリセンで叩く。
うだうだとした動きでのっそり腕を伸ばす二人だが、腰から下を炬燵から出していないので明らかに取る気が皆無だった。
ハリセン二発目が繰り出され、二人の頭にたんこぶが作られる。それでも変わらず二人はぎゃいぎゃい言い争って蜜柑を取る様子を見せない。

すると、無音で襖が開く。

「「「あ」」」
「あ?」

高杉の手によって、いや足によって蜜柑が潰れてしまった。

「うーわー高杉くんってば最低ー、てかなんで来たの」
「ふむ、弁償した方が良いぞ」
「……邪魔したなァ、雪成」
「クールぶって帰らなくて良いですよ、その方が痛いですから。洗うので脱いでください」

蜜柑の汁で畳と高杉の履物が濡れている。
ナイーブな高杉はこの時点で銀時のアホ面に一発叩きこみたかったが、ぐっと我慢した。
雪成に袋を差し出し、履物を脱いでから炬燵に入る。

「土産だ。それから履物は指定した場所に送れ、送料代はこっちが持つ」
「格好付けタイプってこういう時どういう顔すればいいのか分かってないんだよな。痛い、痛いよお母さーん!痛い人が此処にいるよー!」
「笑えば良いと思うよ」
「言う中の人が違いますね。おや、アイスですか」
「じゃ銀さんはこれ貰ってやる」
「お前にやったんじゃねェよ」

パパッと素早い動作で袋から苺味を見つけ出すとセットでついているプラスチックスプーンで食べ始める銀時。
青筋を浮かべて睨み付ける高杉にまあまあと声をかけながらその場の人数分アイスを配り、雪成は設定を4から2に戻す。

すると、天井に穴が開いた。

「「「「あ」」」」
「アッハッハッハ!参ったのォ、また不時着してしもうた!」

宙からやってきた馬鹿の手によって、いや小型宇宙船によって天井がやられてしまった。

「お前か辰馬ァァァ!俺の家だけじゃ飽きたらず雪成のもやるんじゃねェよ!!」
「あれ?なんじゃ偶然じゃのう、まさか四人揃ってる所に落ちるとは!」
「坂本、貴様……まさかそのような登場の仕方をするとは流石の俺も予測出来なかったぞ、次は真似しよう。後輩たちも大喜びだ」
「アホか、何意味のないテロを寺子屋にかまそうとしやがる」
「領収書は陸奥さんに送っておきますね。あ、返信もう来ました。"全額アホの懐から差し引いておく"だそうです」
「え!何時の間に陸奥の連絡先教えられちょるんか!?わしでもプライベートアドレスを知るまでかなりかかったのにのォ!」

パソコンで陸奥にメールを送る雪成に馬鹿高い笑い声をあげながら炬燵に入ろうとする坂本。
だがこの場において自分の座るスペースを減らすような事を許す奴は居ない。
銀時の隣に座ろうとして阻止され桂の隣に座ろうとして阻止され高杉の隣に座ろうとして阻止され雪成の隣に座ろうとして阻止された。ついでにハリセンで二発叩かれ、たんこぶが重なった。それを見た桂が一番上に蜜柑を乗せて鏡餅が出来上がる。

「はははは!泣いていい?」
「人の家の屋根をブチ抜いておいてよくそんな顔でいられますね、坂本らしいですが腹が立ちます」
「細かい事を気にする男じゃのー!」
「いや、どこも細かくねェだろ」
「いや高杉は細かい」
「そうだな、高杉は細かい」
「あと小さい」
「うむそうだな、高杉は小さい」
「てめェ等……」

宇宙船によって出来た穴から冷たい隙間風が入り込む。
桂以外の四人がクシャミをハモらせた。

「む、俺だけが空気を読めないようではないか。それは坂本の役割だろう」

「それは無い」
「それは無ェ」
「それは無かろう」
「それは無いです」

攘夷時代一度も風邪を引かなかった男には言われたくなかった。


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