紫が混ざった白粉で顔や腕などの露出箇所を塗し、天冠できっちり額をデコレーション。 この日の為に用意した真っ白い着物を着れば完成である。 「うらめしやぁ」 「もっとこの世に生きる者たちへの恨みを込めて」 「うぅらめしやぁぁ」 「声がよく通りすぎますね……掠れていた方がそれっぽいかと」 「う゛、らめしぃぃ、やァ」 「良いですね、百点に限りなく近いですよ雪成!」 拍手をしながら私の演技を褒め称えている松陽は全身が包帯まみれの包帯男の仮装をしており、視界は右目の範囲のみ。一部分意図的に緩ませた包帯の隙間からぼさぼさにした髪の毛がぴょんぴょんと飛び跳ねていて不気味さを感じさせる。 相変わらずノリが良い松陽は包帯男の演技にも気合いをいれているので、全身に醜い傷を負っているという設定でずるずると這うように歩く動作にはリアリティしか感じない。 「これで驚いてくれますかね?」 「銀時はきっと驚いてくれますよ。しかし他二人はどうでしょうか……矢張りこちら側の迫真の演技にかかっていますね」 「松陽はもうバッチリじゃないですか、私は自信ないですよ。幽霊の仮装とかありきたりすぎません?」 「銀時相手なら間違いなく致命傷を与えられると思いますが」 「やるからには桂も高杉も吃驚させたいです」 二人共澄まし顔が多いですからね、是非その表情を崩してあげたい。 銀時だけを除け者にするような真似はしません、三人揃って仲良くみっともない悲鳴をあげさせてみせますので安心してください銀時。全員驚けば貴方が幾らビビろうが後日馬鹿にされたりしないでしょうからね、優しいですね私。 「ふうむ……では、いっそのこと本物だと勘違いさせるレベルまで高めてみますか?」 「やりましょう!」 「「「ぎゃァァァアアア!?」」」 更なる完成度を目指すべく刀でちょちょいと傷をつけてマジモンの流血を作りだし、仮装の為に着替えている三人の不意を突き明かりを消す。私たちの名を呼ぶが返事が来ず戸惑う三人を松陽と連携をとりながら追い回し脅かしまくった。 松陽の脚って本当に速いですからね、体力もありますし本当の化物です。息一つ切らさないとはどういうことなんでしょうか。 走っても走っても振り向けばおどろおどろしい歩きで、その癖素早い動きで追いかけてくる包帯男の松陽に本気でビビッて念仏を唱えた桂には笑わせていただきましたし、銀時に足払いをして生贄にした高杉には腹を抱えましたし、顔から流れる水という水を全て垂れ流し逃げ惑い高杉への呪詛を叫ぶ銀時にはこっそりバレないよう写真を撮っておきました。 私も頑張って三人を脅かしたのですが、松陽には敵いませんでしたね。一定の距離を保ったまま三十分きっちり三人の後を追い続けた松陽が今回のMVPだと思います。 本来なら三人に内緒で仮装をして最初にバア!と驚かせて、その後はちょっと豪華なお菓子を一緒に食べて遊んで、とそんな感じの緩いイベントを考えていたんですが恐怖の鬼ごっこと化してしまいました。 「別に俺はビビッてなどいなかった、ただ貴様らがあまりにも過剰に反応するので可哀想に思い付き合ってやっただけだそこのところ勘違いするなよ」 「ハァ!?別に俺はビビッてねェっつうの!ヅラお前嘘吐くんじゃねえよ!」 「う、ううっ、おめーらバカヤロウ……マジふざけんな……」 種明かしをしてからの三人の反応も大変美味しゅうございました、お疲れ様です! 「来年は工夫を凝らしましょう、当日に計画変更で行き当たりばったりの直球勝負になってしまいましたから」 「そうですね、雪成。私ももっと演技力を磨こうと思います」 「「「止めろ!!!」」」 戻る |