むしゃむしゃと良い食いっぷりを披露している万事屋三人に、寺子屋の面子は揶揄する。そりゃあもう存分に揶揄った。

「こういうイベントじゃないと腹いっぱい食えないんだろ?いいぜ、もっと食えよ……俺の奢りだ……」
「神楽ちゃん、これ食べていいよ!」
「えっ、銀ちゃんたちこれが今日の三食分のご馳走なの……?ぼ、僕の分、食べる?」
「おう、くれるっつうんなら遠慮なく貰うわ」
「少しは遠慮しろよアンタ」
「じゃあ新八だけ無しで良いネ。私はお菓子食べたいから貰うアルヨきゃほー!!」

「皆さん元気が良いですねえ」

通常運転の主に二名が図々しい万事屋の姿に笑いが生まれ、にこやかな雰囲気な部屋に雪成がカボチャを模したお菓子入れを持ちながら入ってくる。
雪成の声と新たなお菓子の気配を敏感に察知した銀時がいち早く扉の方へ顔を向けると、予想していなかった姿に目を丸くした。

「おま、仮装してたのかよ!」
「今年はするつもりなかったんですがね……何時ものように子供たちにせがまれまして」
「へえ皆さんがですか。凄く似合ってますね松下さん、格好良いです。僕一瞬誰かと思っちゃいましたよ」
「うん、せがんだよー」
「ハロウィン衣装の先生が見たかったからっていうのもあるけどあの人に頼まれたしせがんだー」
「あの人?」

新八が首を傾げるが、それも直ぐに忘れてしまう。銀時が携帯を取り出し、吸血鬼の格好をした雪成の姿を無断で撮りだしたからである。

「売れる、コイツは絶対に良いネタになる!」
「良い被写体ではあるけど何写メってんだお前!勝手に売りさばくとか犯罪ですよ!」
「得た金の三割を私に収めるのなら構いませんよ」
「エッ」
「うるせーな、冗談だよ。ジョーダン」

わざとらしく舌打ちしつつ銀時は携帯を懐に収めた。
雪成は銀時の様子を少しの間見つめていたが、ニヤリと人相の悪い笑みを一瞬浮かべると銀時との間の距離を詰め、吸血鬼らしい鋭利な付け歯をわざとらしく見せつけ首元に顔を近寄づけた。きゃあと一部の女子が嬉しそうに声をあげる。

「皆さんに悪影響を与える悪い子にはお仕置きが必要ですかね……?」
「ッ……!?バッ、何言ってんだよテメェ!悪影響与えてんのはお前だろ離れろ!」

雪成の肩を掴みがばりと勢いよく離した銀時は多少耳を赤くさせ胸元を押さえつけながら、普段は後頭部の高い位置で纏めている長い髪を野放しにして晒している部分を指差す。

「吸血鬼伯爵のつもりか、いや処女強奪男爵のつもりか!神楽には近づくなよ!」
「吸血鬼伯爵のつもりではありますが後者は甚だ心外です」
「銀ちゃん、私の初めては良い男に授けてやるって決めてるアル。今日の先生は高得点叩きだしてるから私は別に構わないアルヨ」
「いや構えよ!神楽お前さ、雪成なんかに処女捧げて良い訳ねえだろ?もっと世の中には良い奴いるぜ銀さんとかな、な?」
「「「それはない」」」

寺子屋にいるほぼ全員から一斉に突っ込まれ落ち込んでいる銀時を尻目に、雪成は衣装の写真を送ってきてほしいと頼んできた沖田のラインを確認する。

『ありがとうございやした。水も滴る良い男とはこの事でしょう、水をぶっかけたくなってきましたんでこれからそっちに行きます』

(相変わらずですね)

くすくすと笑いながら、こうやって皆が笑うのなら来年のハロウィンは前日急に配送してきた宇宙の馬鹿からの衣装ではなく、生徒をそそのかした穏健派テロリストのお膳立てでもなく、自分の意志で参加してみようかと脳内で計画を立て始めた。


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