暖かい日差しを浴びながら欠伸を噛み殺す。今日はなんだかやたらと瞼が重いですね、参った参った。

「にゃー!」

最近は猫が増えましたねえ。ペットブームが起こったからでしょうか。飼うだけ飼って飽きたら捨てる……嘆かわしい限り。喧嘩をしている野良猫たちを一瞥し通り過ぎる。

「にゃあ!にゃーお!!」

おや、随分と力強い鳴き声。生命力や活力ががつんがつん伝わってきますね、これは活きが良い。きょろきょろと辺りを探ると、足元の傍に白猫が必死の形相で鳴いていた。何処となく既視感を抱いたので腰をおろして手を伸ばしてみると、特に抵抗もなく白猫の頭を撫でる事が出来た。

「人懐っこい猫ですか」
「まーお!」
「よしよし」
「にゃおー」

抱き上げて腹を撫でていると今度は黒猫がやってきた。不細工面の白猫と違って気品がある黒猫はスカーフを巻いている。野良猫なのにお洒落に気を遣っているのだろうか、可愛い。

「ウホ!!」
「おや野ゴリラがこんなところに」

ブサカワと綺麗な猫の後ろにゴリラ。何故ゴリラ?動物園から逃げ出してきてしまったのでしょうか。

「にゃあご!!」
「ふにゃあ!」
「ウホッウホホ!」
「人気者ですねー私」

何やら三者三様でニャンニャンウホと騒がしく鳴く。一向に鳴り止まない。唐突なモテ期がきて困っちゃいますね、どうしましょう。いや、待てよ?またたびも持っていない私がモテるわけがないです。ましてやゴリラなんて以ての外。猫とゴリラはなにか目的があって私にじゃれついてきているのでは。

「もしかしてお腹空いてますか?」
「「ニャー!!」」
「ウホー!!」
「当たりですね。もう、一回だけですよ猫さんゴリラさん」

神様に会ったかのように拝みだす三匹。シュールです。最近のコンビニは何でも売っている。そう、猫缶もバナナも。さらっと買って元の場所に戻ると三匹は移動せず同じところで待っていた。白猫が嬉しそうに足元に駆け寄ってくる。

「にゃお!」
「良い子良い子。さあどうぞ」

缶詰を開けると勢いよくがつがつ食べだした。ゴリラは器用に自分で袋を破って皮も剥いでいる。知能指数高いですねえ。

「中々に愛らしいですね」

パシャパシャと何枚か携帯で写真を撮る。不細工に食べる姿をアップして個別に、三匹一緒に食べてるシーン、それから食べ終わって満足そうに腹を叩いている様子も。仕草がなんとも人間臭い。……それにしてもやっぱり、

「万事屋さんに似てますね、君」
「!!ニャーゴロゴロゴロ!」

途端にヒシッと膝にひっついてきながら喉を鳴らす白猫。引っぺがして顎を撫でて落ち着かせる。ふにゃんと幸せそうになった。可愛い。が、直ぐに現実に戻って来たようで我に返りニャアニャア鳴き始める。

「ははは、君私の事好きですか?」
「なーご!!」
「そんな嫌そうな顔しないでくださいって、余計似てますよ」
「ふな!?」
「ん〜本当によく似ている……この毛並なんてそっくりだ」

彼の髪質を思い出しながら何度も撫でまわす。先程と違いジタバタと暴れだすが、いったい何が気に食わないんだろう。もしやこの白猫、万事屋さんのことを知っているのだろうか。あの天パと一緒にするなと言いたいのかもしれない。

「もし良かったらうちの猫になります?」
「ニ゛ャ゛!!……に、にりゃ〜」
「うにゃあああああああ!!」
「ウホォォォオオオオオ!!」
「あ」

わいわいがやがやにゃあにゃあうほうほ。毛が逆立った白猫が視線を右往左往させ、おずおずと鳴くと黒猫とゴリラが白猫を連れて去って行ってしまった。なんという変わり身の早さであろうか、私だけが一人路地に残されてしまう。

「抜け駆けは許さないとか、そういう野良ルールでしょうか……?」

黒猫までならともかくゴリラは流石に室内じゃ飼えないですしねえ。



「オメー、猫好きなの?」
「基本的に嫌いな小動物はいませんが」
「ふうん……銀猫とかは?」
「銀?ああ、そういえばこの前貴方に似た野良の白猫を見つけたんですが、ブサ可愛くて飼うのも悪くないかなと思いましたね。不細工ですが愛嬌があって、見た目だけでなく性格も何処となく万事屋さんに似ていましたよ。いやあ、本当愛らし――」
「へ〜〜〜そうなんだへ〜〜〜〜〜!!」
「ちょっと煩いんですけど」


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