「なあ、なんで歯を磨かなきゃいけねーんだ?」
「虫歯が出来るから」
「虫歯ってなに?」
「悪い菌が作った酸で歯を溶かす、それでボロボロになった歯が虫歯っつうんだ」
「ふーん」
「歯磨きする事で防衛してんだ、しなきゃ何もかもボロボロになって死ぬぞ」
「でも面倒臭ェ」
「我慢しろ。お前は特に甘いモン好きだろ、甘いモンは悪い菌が山ほど詰まってんだよ、だから美味いんだ。罪の味ってことだ。沢山食う分しっかり磨け」
「ほーん」
「テメェから聞いた癖に興味ねえ感じ丸出しなの止めろ」
「別にー」



走馬灯で流れた光景に項垂れながらベティを取り外して治療してもらう。あれ、なんかしょっぱいけど雨でも降ってんのかな、此処屋内なのにな。不思議だな。雪成の言う通りしっかり磨いときゃよかった。

「何してんですか」
「げっ雪成!?」
「また怪我でもしたんですか、貴方」
「いや別にィ?!ベティが怪我したから付き添いで来ただけだよベティマジ可哀想だったからなー!」
「誰だベティ」

じろじろと俺を見た後隣に座ってくる。にっこりと笑顔を浮かべて。……あ、なんか嫌な予感する。

「ところで万事屋さん、おやつをどうぞ」
「おうサンキュ、って煎餅じゃねーか!」

袋ごと渡されても食えねえよ!

「甘味ではありませんがこれも立派なおやつでしょう?」
「見りゃわかんだろ俺今虫歯中なんだよ!あからさまな嫌がらせ止めろ!」
「あら失礼気付かなかった」
「白々しいうぜえ!」
「万事屋さん」
「なんだよ!!」

苛々を隠さずにがりがりと頭を掻きながら返す。煎餅は仕方がないから神楽の奴に与えるとする。

「病院ではお静かに」
「ごばっ」

デコピン殴打で吹っ飛んだ。超痛ェんだけどこれ。口ん中も痛ェし頭も痛ェんだけど。歯医者で痛い目見て病院でも痛い目見るってなに、今日厄日か何か?てか治す施設で怪我するってどういう事だよ、幾ら負っても直ぐ治せますから大丈夫ですよ存分にダメージ受けてくださいってか。

「まあ確かにこれは明確な嫌がらせですけどね」
「性悪が!」
「ねじ曲がりに言われたくありません」
「ちゃんと磨いてるっつの、ただ磨き残しがあってそこがやられちまっただけで!」

あくまでケアレスミスを主張した。じゃねェと此奴はネチネチとうざいからである。それに嘘は言ってねえし、マジで何時の間にか出来てたんだし。

「ほう、歯磨き自体は行っていると」
「おう!」

なんだその目は、疑ってんのか。かーっ悲しいねえ銀さんの信用どんだけねえわけ。

「ベティが何処の誰だか存じませんが、付き添いが終わったらきちんと歯医者に行くように」
「分かってるっつの。てかお前はなんで病院いんの」

頬を労わりながらジト目で雪成を見る。

「生徒の一人が骨折したのでその見舞いですよ」
「ほーん」
「自分から聞いた癖に興味のない声丸出しなのは止めなさい」
「別にー」

まあ見た目で分かってたけどね怪我してないことぐれェ。


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