「河童が釣れる池?」

寺子屋に遊びに来た神楽ちゃんが胸を張りながら意気揚々と言った言葉に教え子たちは怪訝な目で見つめる。

「河童なんて迷信でしょ」
「いるわけなーい」
「というか、どうせ天人じゃん?」

道端に勢いよく顔を叩きつけられる三名。犯人の神楽ちゃんは痰を吐き捨てながら三名の無防備な背中を蹴り上げた。

「先生、コイツ等クソ生意気ネ。ちゃんと教育してヨ」
「残念ながらクソ生意気に見えるのは神楽ちゃんの方ですね」
「どこが?」

曇りなき目で私を見上げる神楽ちゃん。ずっとそのままならパーフェクトだというのに、性格は外見とは程遠い。万事屋さんの所で居候をしているだけはある。生意気な点を挙げていってもいいが、そういう欠点の指摘と手直しは保護者に任せよう。ニコニコ笑顔で誤魔化して話を挿げ替えておく。

「その池はどこにあるんですか?」
「んーっと……あれ、あれだあれ」
「あれ?」
「吉田さん家の方向をずーっと歩いていって大きな栗の木の下を右に曲がってお菓子の袋が落ちてる所で左に……ん?」
「成程。ちょっと興味があるので案内していただけますか?」
「うん!」
「説明下手すぎだろ」
「ふん!」
「ぶべらっ」

君はちょっとは学習しましょうね。脳味噌ポンコツですか。

「あそこに住んでる河童が困ってたから私たち万事屋が大活躍して解決してやったネ!」
「ふふ、見捨てたりしなかったんですね」
「銀ちゃんも新八もそんな事しないヨ!勿論私もな!」
「流石です」

ぱちぱちと拍手をすれば神楽ちゃんは照れたようにニッと笑う。少女らしい可愛い笑顔だ。

「ところで、折角寺子屋に来たのですし余った計算ドリルを差し上げますから勉強でもどうですか?」
「ヤーヨ、河童のとこ行こ」
「自宅に戻ってからでも構いませんよ」
「人間足し算と引き算が出来れば問題ないアル」
「掛け算と割り算も覚えておきましょう」
「バカにすんじゃねーヨ、掛け算も割り算も朝飯前ネ!」
「本当ですか?」
「嘘言わない!」
「じゃあちょっとこれやってみてください」
「えー」
「……まさか嘘だったんですか?」
「んだゴルァ!証明してやるアル、その目止めるヨロシ!」

一の段から九の段を綺麗に並べた掛け算と二桁の数字のみの割り算が書かれたテストで見事赤点をとった神楽ちゃんには計算ドリルをプレゼント。


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