ぴぴょー、ぴぴょー。
聞き覚えのないマヌケな音が聞こえてきた。なんだ、この音は?

「何してんだよ、雪成」

音の発信源を探していたらその先に雪成がいた。茂みの前で膝を抱えている。何が楽しくてこんな事してんだ、コイツ?と雪成の顔を見ると何故か葉っぱを口に当てていた。どうなってんだ。

「草笛鳴らしてます」
「くさぶえ?」
「ちょっと懐かしくなりましてね。ほら、口元にそこいらにある何の変哲もない葉を当てて、こうして息を吹きかければ……」

ぴぴょー。
さっき聞こえた音が聞こえた。

「葉っぱでそんなこと出来んだな」
「ええ、やり方次第で色んな音も出せますし、吹く人が違えば勿論音も変わりますし、葉っぱを別の物にすれば」

ぴゅーい。
別のまぬけな音に変わり、思わず声が漏れる。

「おおっ」
「銀時もやってみますか?」
「やる」

ちょっと面白そうだ。茂みから一枚葉っぱを千切り雪成の真似をした。
ぶべっ

「ハァ!?」
「放屁しました?」
「してねーよ!!」
「じゃあもう一回」
「言われなくても!」

ぶぶぅー

「やっぱり放屁しました?」
「してねェっつってんだろ!!おい、コツとかあんだろ教えろよ!」
「うーん、こういう遊びはコツ云々より慣れですしね……数をこなさねば」
「おいお前等、何やってんだ」
「おや、高杉」

ムキになって何回も何回もやっていたら高杉の奴が俺の背後を取っていた。これに夢中になっていたとはいえクッソムカつく。もうコイツとの勝敗はだいぶ競り合ってきてるっつうのに!

「あ、そうだ。おい高杉くんお前もこれやってみろよー!草笛っていうんだぜ」
「は?草笛?」
「知ってますかね、草笛。こうやるんですよ」
「いや知らねェ……ふーん」

ぴょーい。
手本を見せた雪成に高杉も葉っぱを使って真似をする。失敗しろ〜〜〜〜失敗しろ〜〜〜〜と念を送りながら見ていたら。
ぷへぇー。

「ギャハハハッ!ぷへぇ〜だって!」
「なっ……!笑うんじゃねえよテメー!」
「ぷぷ、成績優秀な高杉くんでも出来ない事があるんだねボク始めて知ったよぷぷぷ」
「そういうお前はどうなんだよ、できんのか!?」
「出来ますけどー!?出木杉くんですけどー!」
「屁みたいな音出してましたよ」

あっ!テメッ!

「はん、そらみろ」
「バラすなよ空気読め雪成!」
「空気は読むものではなく吸うものです」
「三人で何をしてるんだ?」
「なんだ桂か」
「こんな場所で座り込んで、なにか面白い物でも見つけたか」
「おい桂、草笛って知ってるか?」

高杉の奴自分が恥かいたからって桂も巻き込もうとしてんな。なんて奴だ、こういう性格の奴を最低っていうんだろうよ。

「知っているが……ああ、それをやっていたのか」
「お前もやってみろよ」
「ふむ。まあ構わんが」

ぴぃーう。
……なんだ上手いじゃねーかチクショウ!

「御婆さんから教わったんですか?」
「その通りだ。最近はやる暇が無かったから変な音を鳴らすかもしれないと思ったが、存外身体が覚えてるな」
「「……」」
「雪成さん、コイツ等はどうして俺を睨んでいるんだ?」
「一番草笛が上手いからでしょうね」
「なるほど、下手なのだな」
「ちっげーし!こんなん直ぐ上達すっから!」
「この程度のことが出来ないわけがないだろ馬鹿!」

クソ、すげェ腹立つ顔しやがって桂この野郎!!

「四人揃って何をしているのでしょうか?仲がいいですね」
「あ、松陽」

……松陽はどっちだ?自然と俺らは目を合わせあい、今までの会話が止む。その後に最初に動いたのは雪成で、持っていた葉っぱを松陽に見せた。

「松陽、草笛についてご存知ですか?それで遊んでいたんですが」
「知ってますよ」
「ならやってみてくれよ、これ葉っぱ」
「実は知ってるだけでやった事はないんです」
「一回もか?」
「ええ、そうですよ晋助」

俺が渡した葉っぱを持って困ったように笑う松陽。知ってたら一回くらいやってみたくなんねーの?変な奴。

「やる機会がなかったもので」

おい、今俺の心の中読んだな。読むなよ。

「銀時は分かりやすいですから。ねえ雪成」
「確かそうですね。ねえ松陽」
「先生!雪成さん!俺にはコイツの考えてる事がまったく分からないですが何処が分かりやすいですか!」
「……」
「ほら高杉もそう言ってます!」
「言ってねェよ」
「心の中で思ってただろ!」
「なに勝手に俺の考え読んでんだテメー」
「ははは。今の小太郎と晋助のように、長く共に居れば相手の考える事なんて手に取るように分かるようになりますよ。ねえ雪成」
「今夜の夕飯は魚です、勝手にメニュー変更しないでください銀時。ねえ松陽」
「え?本当ですか?」
「やだ。焼肉が良い。……ってマジで心読まれてんな!?お前もかよ!」

俺のプライバシーどこいったよ!何考えててもサトられちまうなら怖くて何も考えられねーじゃん!

「別に完全に読めるわけではなく、今までの習慣からなんとなくですしね……今日の松陽は魚を食べたそうにしているように見えたので魚にしたんですが、どうです?」
「完璧ですね……素晴らしいです。焼き魚を食べたい気分でした。ところで雪成、今日中に障子の張り替えをしようと思ってますよね?私もやりますよ」
「おお、その通りです。では一緒にやりましょうか」
「オイ!!分かってっぞ、そうやって俺を除け者にして内心笑ってんだろ!何時突っ込みいれながら入り込んでくるかわくわくして待ってるだろ!!」
「「正解」」
「チクショウ、思惑通り動いちまった!」

「ちょっと待ってくれ。高杉が先生と仲がいい二人に嫉妬して射殺さんばかりに睨み付けているからもう少し仲悪そうにしてくれるか」

仲がいい?何処が!からかわれてるだけだろーが!



「折角なので松陽も草笛やってみてください」

雪成の一言で俺らの耳から血が流れた。松陽に今後二度と草笛は吹くなと俺らはきつく、何度も、練習もするなと言い聞かせた。何をどうしたらあんな破壊音が出るんだ。やっぱ化物だアイツ。


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