「先生ェェェェェ!!」
「はーい?朝から元気ですねー」
「助けてェェェ!!」
「死ぬ!死ぬゥウ!!ゴキブリがー!!」
「今こそゴキブリ特別対策授業の真価を見せる時です、ファイト」
「いやこれは無理ィィィ!!」
「すっごい大きいのー!!そこらじゅうにいるのー!!」

なにか何時もより大変そうですね、よっこいしょっと。……ん?

「うちの子に何してくれんだぁぁぁああああ!!!」

登校中の教え子たちに襲いかかるとんでもない大きさのゴキブリを吹っ飛ばし、べそべそと泣く皆を抱きしめる。

「先生がっごい゛い゛ィ……ひぐっ」
「怖がっだあああ」
「顔から出るもの全て出てますね。怪我はないですか?」
「ばい」
「う゛ん゛」

無傷の皆さんを寺子屋に避難させ、テレビをつける。タイミング良く朝の生放送ニュースで巨大ゴキブリが大量発生している事を速報していた。

「家にも入り込むのですか……」
「せ、先生!どうしよう!ここにもいたら!」
「皆さん毎日真面目に清掃に取り組まれてますし、大丈夫だと思ってたんですがね」
「バルサンどこに置いてたっけ!?」
「一匹いれば数十匹いると思えとはよく言われますがあれが何十匹もいるのは駆除に骨がいりそうですね」
「おい、見つけたぞ!これだ!」
「汚部屋ならぬ汚地球にでもなってしまったんでしょうか」
「それパイソンンンン!!」
「危ないから返してきなさい」

と咄嗟に反応してしまったが、外はゴキブリまみれだったことを思いだしたのとパイソンを首に巻きつけてきた教え子の目がイッていたこともあって気絶させる。パイソンを回収して虫篭に閉じ込めた。

「皆さん、こんな時こそ心を強く持たなければいけませんよ。身体が大きいだけで内部構造は普段のゴキブリと変わりません、殺せば死にます。念のため武器は持っていてください」
「先生、あんだけでかかったらめっちゃ怖いです」
「でかい分耐久度とか上がってると思います、殺せるんですか」
「緊急時でも冷静なツッコミをいれられるだなんて、皆さんが立派に成長している姿を確認できてこんな時になんですが先生は嬉しいです。強靭な心への第一歩ですよ」
「巨大ゴキブリ倒せる強靭な心持っててなんか意味あるんですか!?」

ゴキブリ特別対策授業を行っているとはいえ、流石にあのサイズではビビッて無理ですかね。ゴキジェットなんて予備含めて三つしか無いんですが、明らかに不足していますし。

「皆さん、これを受け取ってください」

ゴキジェットだけではなく、竹刀や木刀、カッターなど抵抗手段を教え子たちに渡していく。

「先生っ!これ先生が使ってる木刀だよ?!」
「先生だけ何も持ってないよ、僕のあげる!」
「その気持ちだけ貰います。大丈夫、私には生まれ持ったこの拳がありますから」

ちょっと皆さん。「あー……」じゃないでしょう、なに納得してるんですか。もうちょっと心配してくれてもいいんですよ?

「そーいやさっき素手でぶっとばしてたし」
「俺ら誰も勝てたことないし」
「先生なら大丈夫だよね!」

ヴヴヴヴと懐の携帯が振動し、ぶつくさ言いながら応答する。

「薄情な子になってしまったものです。はい、もしもし?」
《あ、繋がった繋がったァ。俺でーす》
「沖田くん」
《無事ですかィ?》
「ええ、今のところは。こちらにはゴキジェット三つあるんですけど、今まで三本もあれば事足りると思ってた己の甘さに気付いたところです」
《俺も同じですぜ。なんにしたって準備万端でいるのは良い事だったんですねェ》
「で、ご用件は?」
《御宅の門人が宇宙ゴキブーリに襲われてたんで助けた所なんでさァ。ゴキブーリの対処もありやすしずっと預かってるわけにもいかないんで、今そっちに連れてってるところです》
「そうでしたか、ありがとうございます沖田くん。お巡りさん活躍ですね」
《コイツ等は俺の舎弟ですからねェ、護んのは当たり前っつー奴です》
「ふふ、そうでした」
《俺以外の奴が泣かすのは気にくわねェしなァ……っと、着きやした。開けてください先生》
「はい。ちょっと待っててください」

電話を切り、ガチガチに固めた玄関を開けて沖田くんが連れてきてくれた気絶したままの教え子を預かった。

「そんじゃあ地球の命運は俺に任せて、先生とガキ共は二度寝でもしててくだせェ」
「それもいいかもしれませんね。さて、もう一度改めて感謝を。ありがとうございます」

フッと何時も通り生意気そうな笑みを浮かべ沖田くんは後ろでわちゃわちゃとしている教え子たちに目を向ける。

「頑張ってねっ総悟兄ちゃん!」
「派手にブチかましてくらァ」
「あのゴキブリ怖いから早く何とかしてね!」
「俺ら真選組がしくじるわけねェだろ」
「ゴキブリに尻かじられちまえドS星じアダッ?!」
「俺に生意気な口を叩くたァいい度胸だ、次来た時にその両手の爪を剥がしてやっから楽しみにしとくんだな」
「ヒィィッ!先生助けて!」

私の腰にしがみ付く子をニヤニヤと見下ろしてから沖田くんはパトカーに戻って行く。ぶんぶんと大きく手を振って教え子たちは見送る。

「怪我しないでねー!」
「応援してる!」
「行ってらっしゃい沖田くん」
「へーい」



暫くして万事屋さんから疲れ切った声で電話がかかってきてご飯に誘われましたが、子供たちを放っておくわけにはいかないのでお断りしておいた。


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