「「いくぜ」」

「「斬ってかわして」」

「「ジャンケン」」

「「ポン!!」」

……何してんでしょうか、この人たちは?

「とったァァァァ!!」

いやとれてないとれてない。今切ったの、桜。今年も綺麗に咲けた桜。目腐ってんのか。

「雪成先生、やっときたー!遅いー!」
「お腹空いたよ〜」

まあいいか、無視無視。それより花見です。

「ああごめんなさい。テストの採点が終わってやっと来られましたよ、明日の返却を楽しみにしていてください。皆さんジュースは配り終わってますね?では失礼して……乾杯!皆がわくわくして待ち望んでいた花見の開催でーす」
「せんせーい、あんま素直に乾杯できないんですけど」
「30点以下だった人はランニング30週です」
「鬼だ!」
「まったく楽しめない!」
「明日が怖い!」

「あれ、松下さん?貴方も花見を?」

志村くんや見知らぬ女性、そして厳つい男たちが同じ場所で仲良く花見をしていた。見慣れないグループに目を丸くさせる。

「志村くん?おや、珍しいですね。真選組の方と一緒だなんて」
「あはは……なんか最近よく会うんですよね。色々あったんですけど、あのバカを肴に一緒に飲もうってことになって」
「成程」

ちらりと段々ここから遠ざかりながら喧嘩をしている白色と黒色を見る。ぶんぶん剣と振り回して周囲に災害を撒き散らしていた。あれは酔っているな。なんとも情けない。

「松下さんは生徒の皆さんとですか」
「ええ、どうしてもやりたいとせがまれまして」
「この弁当先生が作ってくれたんだぜ!」
「凄く美味しいよ!」
「えっそうなの?うわ飾り付けとか本格的……凄いですね松下さん」
「慣れれば簡単ですよ」
「姉上と大違いだ……」
「え?」
「アッいえいえいえいえいえいえいえいえなんでもありません!!」

冷や汗だらだらですけど大丈夫ですかこの子。手振りすぎて残像が見える。

「お、お前何時の間に影分身の術を会得しやがった!?クソッ多串君が一人多串君が二人多串君が三人……!!」
「万事屋ァ!いい加減グー以外出せや!次俺パーだすからな、絶対パーだすかんな!?」

「「……はあ」」

遠くから聞こえてくる声に山崎さんと志村くんの目が遠くなり、溜息が重なった。いやはや、あんな上司を持つと大変だなぁ。

「あ、そうだ。もしよければ松下さん達も僕らと一緒に花見しませんか?」
「ん?面白そうな申し出ですが、真選組の皆さんは……」
「俺たちも構いませんよ、気にしないでください」

改めて確認すると、割と無礼講の雰囲気で皆思い思いに好きにやっているのが見えた。というか、局長さん伸びてるんですが。何があった。誰一人として気にかけていないじゃないですか。

「彼奴なんぞが影分身できんなら俺だってなァ、かめはめ波うてんだよォ!!実はこっそり練習してました!波ァァァアアア!……あ、今ちょっとでた!それっぽいのでた!なあ見た!?見た見た!??」

うわあ……

「ジャンケン!ポン!……クソ、決着がつきやしねェ……ふん、中々やるな。心理戦も物ともしねえとは、俺はまだお前を侮っていたらしい」

うわあ……

「あはは、あの兄ちゃんたちバッカでー」
「かめはめ波なんてできるわけないじゃん!」
「桜相手になにやってんのあの人?」

「「はあ……」」

私の生徒たちが無邪気にぶちまける言葉に部下たちは虚しい溜息を再度吐いた。

「流石に真剣を持たせたままは危険なので取り上げてきますね。皆さんは花見を続けていてください」
「え!?松下さん、危ないですよ!あんなバカ放っておきましょう!」
「どうせ手元が狂って落としますって、大丈夫ですよ」
「そうですか?」
「「そうそう」」

さっきから仲良いな、この二人。苦労人同士だから?

「さ、松下先生も飲みましょう。注ぎますから」
「あら、ありがとうございます山崎さん。では一杯」

「新ちゃん、この方は?」
「姉上!そうだ折角ですしご紹介しなきゃ。松下さん、こちらの女性は僕の姉なんですよ」
「志村妙と申します」

頭を下げて自己紹介をしてくる女性と同じように私も頭を下げる。

「初めまして、松下雪成と申します。寺子屋でこの子たちに勉学を教えておりまして、本日はご褒美で花見をしにきたんですが偶々会った志村くんたちの御好意でご同伴させていただいた次第です」
「これはどうもご丁寧に……松下さんは確か銀さんの知り合いだと聞いたのですが?」
「ええ」
「……本当に?知り合いというか友達だとも新ちゃんから聞いてたんですが」
「それが姉上、本当らしいです」
「弱味握られてるんですか?」
「はははは」

弱味はこっちが握っている方ですと答えようか迷い、笑顔で誤魔化したら姉弟揃ってこそこそと話し始めた。

「やっぱり弱味握られてるんだわ」
「こんな人間出来てる人があのぐーたらと友達なんてありえませんし」
「可哀想に……きっと酒代とかを代わりに払わせてるのよあの男」
「人の足を引っ張るのが大得意ですからねあの人」

お〜〜〜い銀時〜〜〜いい加減酔いから覚めた方が身のためですよ〜〜〜〜信用が地の底どころか地獄の底まで落ちてますよ〜〜〜

結構面倒見が良い人が揃っている真選組の皆さんに遊んでもらったりしている教え子たちを肴に酒を飲んだり、沖田くんと神楽ちゃんがピコピコハンマーで戦っている様子を肴に志村くんと話を弾ませたり、未だに放置されている局長さんが少し不憫だったのでタオルケットをかけたり、楽しく花見で過ごせました。

え?あの二人はどうしたって?あのまま野放しにしていたらどっかの自販機の入り口に頭突っ込んだり天辺に乗っかったりしそうな予感があったのでそれぞれの部下に持ち帰るように言いつけて、なんとか家にまで帰らせましたよ。公道にいたら邪魔でしかありませんからね。恥をバーゲンセールで大放出するの止めてもらいたいです。


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