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ぽーんっ。効果音はこれが正しい。まさにぽーんっと別世界に放り込まれた。
ハリボテの壁に天井から吊るされた雲……そして学校。なにやら気の抜ける空間。のほほんとした空気。
「……ん?」
しかも身体まで縮んでいた。まさにデフォルメ二頭身。
「はて、どうしたものか」
頭までふやけているような気がする。現時点で特に危機は感じないし、行動あるのみと歩みを進める。
「あら、新人さんですね!」
「如何にも此方には先程着いたばかりだが、君は?」
「高等部の教師をやってる藤村大河よ、よろしく!ここは型月学園、きのこ校長の力で作られた?らしいので、脱出は出来ないから降参して平和な学園ライフを送ることです」
「それは大変だ」
試しに校門が書かれている壁に向かって攻撃しようとするが、高い威力を込めた魔力の塊はぽすんと間抜けな音を立ててへろへろと床に落ちるだけだった。
「学園ライフか、面白そうだな。藤村、良ければこの世界のルールを教えてくれ」
「勿論、大船に乗ったつもりでどーんと任せなさーい!」
随分と賑やかな人である。こうまで明るい性格の持ち主にはアデルになってからとんと縁が無かったから、好ましくは感じるがちょっとばかり慣れない。
奢って貰った缶珈琲を飲みながら、藤村から教わった型月学園とやらの校訓とこの世界のルールを前にどうしたものかと首を捻った。
(生徒は無いな)
まず授業を受ける選択肢は消える。かといって藤村のように教師をするのも難しい。……どうしたものか。
「んー、そんなに悩まなくても良いんじゃないですか?」
「そうだろうか」
「気軽にぽんぽん立場を変えられますからねー、嫌になるくらい。簡単に、楽ーに決めて、実際にやって嫌ならまた別のにすればいいと思いますよ!」
「ふむ……」
堅苦しく考えすぎたかもしれないな。では、この型月学園の様子を見て回る為に一つ試しに働くか。肌に合わないなら藤村の言う通り変更すれば良いだけの事。
「お、その感じだと決まりました〜?」
「ああ、清掃員をやってみようと思う」
「て事は校務員ですねー!職員同士よろしくおねがいしまーす!あ、ところでお名前は?」
「アデルだ、よろしく頼む」
「わー馭者座と同じ名前だ」
後でケイローンと再会した時に一緒に先生をやろうと纏わりつかれる事になるが、別の話である。
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