気まぐれ部屋 | ナノ




子供の声がする。

なぜ子供の声だと分かった、と問われれば答えは簡単。
無邪気な雰囲気と、高い声。
女性の声と子供の声は違うし、勿論男の声と子供の声は違う。

……というか、大の大人が「わー!」とか「すっげー!」って周りに構わず騒ぐのってどうよ。
流石にないでしょ。
ガープさんだってしない。…若い頃のガープさんはやりそうな気がするが。
あと、何で声が聞こえる方向が光ってるの?

「海軍本部は遠足先に適してないと思うんだけどねぇ」

「あ、クーちゃんだ」
「ほんとだ、クーちゃんだ」
「ワイせんせー!クーちゃんきたー!」

「はいはい。で、誰がきたって?……あ、クザ………クーちゃん大将」

「何で言い直したのさ」

有給をとり、孤児院の子供たちを率いて海軍本部に遠足に来ているワイ。
おつるさんとガープさん、センゴクさん辺りから許可はちゃんと取っているらしい。
何故おれが子供たちにクーちゃんと呼ばれているのか。
最初、ワイが子供たちの前で「この人がクザン大将だよ。親しみをこめてクーちゃんと呼んであげな」と言ったせいだ。

そのお陰で、孤児院出身の海兵はたまに「クーちゃ…クザン大将!」と言い直す。
原因を作ったワイは素知らぬ顔だ。
ワイ本人は、ちゃんと公の場じゃきちんとした名前で呼んでるし…
というか本当に。何で言い直したのさ。

「クーちゃん大将…少数派の人は多数派の連中に覆い隠されてしまう運命なんですよ…」
「いや意味分からないから」

「クーちゃん遊んでー!」
「わたしとあそんで!わたしとー!」
「おれがさきー!」

「あー、ほら喧嘩しないで。…それで、さっきまでここに黄猿いなかった?」
「いましたよ。みんな、さっきまでサッくん大将のピカピカを見せて貰ってたんだよねー」

「そうだよー!」
「サッくんぴかぴかだった!」
「かっこよかったー!」

「そうなの…あれ、この前はガープさんの砲弾飛ばしを見せて貰ってなかったっけ?」
「そうですよ。超人人間多いですよね海軍って」

『超人人間』か…確かに間違っちゃいない。
砲弾にピカピカ、そして次はおれ…氷か。
砲弾はちゃんと準備すれば被害はないし、光も問題ないけど…氷は見せられないんじゃない?

「悪いけど、おれの能力のお披露目はできそ」
「みんなー!クーちゃん大将がかき氷作ってくれるってさあああ!」

「「「えええー本当ー!!?」」」

キラキラと目を輝かせておれを見つめる子供たち。
……いいけども。
でも味を付けるものないよね。

「じゃあみんな、食堂に移動しよっか。あそこなら何かあるでしょ」
「ああ成る程」

ここじゃ食べないか。
いや、そもそも受け皿がないから無理だ。
…ん?

「なんで黄猿いないの?」
「疑問抱くの遅いですよクーちゃん大将。サッくん大将ならクーちゃん大将がくる直前に部下の方が呼びにやってきてですね。丁度入れ違いの形です」
「ああ…」

ちょっと話したいことあったんだけど。残念。
満面の笑みを浮かべた子供たちが食堂にいっちゃってることだし、それは後回しかな。


prev / next

[ back to top ]



×