６
WC準決勝、試合終了後
「なあ」
「どうしたの」
「今だから聞くけどさ」
「うん」
「お前、実は真ちゃんの事嫌いだろ」
「うん」
「アハッ！あっさり肯定かよwww」
「事実だしね」
「……いや、まあ俺だってそれを責められる立場じゃねえけどさ。入学したバッカの時とか――」
「大丈夫。私は皆平等に嫌ってるから」
「え、俺も？」
「違うよ、キセキの世代の皆をってこと」
「……実の兄を？」
「そう。つっても、バスケ面だけだけどさ」
「……」
「高尾も色々精神的にキてるだろうけど、面倒だから率直に言うよ。うん、嫌いだ。大嫌い。バスケ選手としての彼奴等は嫌い。創作上の彼奴等は好き。友達の彼奴等は好き。兄である彼奴は好き。でもまあ、それとこれとは話が別だしねぇ」
「よく、分かんねぇ」
「言ってる私もよく分かってないから大丈夫だ、問題ない。まあそれはともかくとして、人間の心は本当に複雑だよ。
苦手だけど好き、嫌いだけど気になる、好きだけどいけすかない、ウザいけどある程度は認めてる、とか。私はさ、混じりっけ無しの100％好きって気持ちは絶対に存在しない、ありえないって思ってるよ。その逆もあり」
「なあ」
「どうしたよ」
「お前の中で、キセキの世代のメンバーの人数って……もしかして、6人だったりする？」
「わお。いきなりどうした」
「なんとなく。あ、灰崎ってやつじゃないだろうって予想は付いてる」
「当たり。……なんで分かるのかなぁ？ま、いっか。うん、そうだね、私にとってのキセキの世代と世間一般のキセキの世代のメンバーは違うね」
「……残り一人ってやっぱ、黒子か？」
「ドンドンパフパフ、大当たりですー！さっすが高尾選手！で、何が聞きたいの？」
「いんにゃ、ただ確かめたかっただけ」
「 嘘つき 」
「……」
「……」
「…………あー、分かったよ降参！白状するよ！」
「物わかり良いね。さあ、言いたまえ」
「ちぇっ。……彼奴って、やっぱ天才だよな」
「そうだろうね。兄さんたちと違って分かり易いタイプじゃないけど」
「だよな。彼奴の才能は影が薄いことだし、俺みたいな目をもってないとすっげー分かりずれえよな」
「で？」
「……彼奴、自分も天才の一人の癖に『自分は凡人だ』『努力した才能無き人だ』って面してて、すっげえうざい」
「ほう」
「パスもすげえし、咄嗟の判断力だってあるし」
「うんうん」
「休みを挟まないと使えない、パスだけ、身体能力は凡人並、ドリブルもシュートもダメ、こんなに穴があるんだ」
「そうだね」
「でも彼奴は帝光中の時、一軍から降ろされなかった。それってさ、裏を返せばそんなに制約があんのにスタメンを維持出来てたってことだよな。黒子以上にパスも、ドリブルも、シュートも、ディフェンスも、出来た奴はいるだろうに、彼奴は強豪・帝光の中で勝者で有り続けられたんだ」
「……」
「知ってんだ。黒子の奴が最初っから一軍にいなかった事くらい。泥水を吸って、技を身につけて、どん底からはい上がったってことくらい。馨、お前から、教えて貰ったからな」
「……」
「すげえって思う。尊敬する。……だけどよ、醜い俺は、それ以上に思っちまうんだよ……！！
羨ましい、憎たらしいって」
「……確か試合中、本人に同族嫌悪とか言ったらしいね。高尾のその肝っ玉尊敬するわー」
「そんな褒めんなってwww」
「私は黒子より高尾の方が好感もってるよ。より人間らしいよね」
「え、褒められてる気がしねえ……wwww」
「醜いねー。すっごい醜い。人間の醜悪さがよーく引き出せてる。それを自覚してる。私好みだ」
「……本っ当、褒めてねえな」
「褒めてるよ？だって、黒子って綺麗すぎるんだ」
「……どゆこと？」
「自分で考えなさいよ。まー、ヒント言うならあの綺麗さに惹かれる奴もいるだろうけど、綺麗すぎて嫌煙する奴もいるだろーって事。仮に醜さがあったとしても、その綺麗さで何処かへ消えちゃうし」
――そんな人間、いたってつまんなくね？
「……うっわ、○○ちゃんこっえー……鳥肌立った」
prev / next