気まぐれ部屋 | ナノ




入学する高校が別々になっちゃったから落ち込んじゃったけど、まさかこんなに早くに会えるなんて思ってなかった!

「久しぶりぃ、さつき」
「久しぶりだねっしぃちゃん!」

赤司馨だからしぃちゃん。我ながら安直だ。
でもヘタに凝った名前を付けてもしぃちゃん曰く「恥ずかしい」らしいから、安直すぎるくらいが丁度良いと思う。

「相変わらず髪長いね。手入れ面倒じゃない?」
「あはは、手入れは大変だけど楽しいから頑張れるよ」
「うわー流石さつき。女子力たかぁい」
「もう、しぃちゃんの方が女子力高いよ!人参を星形に切れるし裁縫も上手だしファッションセンスも良いじゃない!」
「照れる」

――あ、所でコレ、新刊ね。
――ありがとしぃちゃん、これお金。

身体を限りなく近づけた状態で行われる取引。
しぃちゃんから受け取ったのは薄い本。薄い割りに値段が張るのが困りものだけど、これはもうしょうがないと腹を割るのが大切。部活が忙しくてバイトが出来ないのはちょっと困るけど……

渡されたお金を何食わぬ顔で制服の内ポケットに入れるしぃちゃんの手腕に惚れ惚れしてしまう。
私なんてまだまだだわ。
この本を誰にもバレないように鞄にいれるなんて出来ないもの。

「ねえねえ、所でさ、高校で良い人見つかった?」
「うん!」
「こっちも良い人盛り沢山。いやあ、正直迷っちゃうくらいだよ」
「だよねだよね。でもその迷う時間がとっても楽しんだよね〜!」
「分かる!流石さつき、分かってるね」


桃井と赤司が言う“良い人が見つかったか”というのは、文字通り“良い男は見つかったか”という意味だ。
但し、意味は合っていても活用法は常任のソレとは異なる。

『801』という特殊なジャンルに属するモノに利用するため、内に潜める獣を隠して“良い人”を探す二人は恋に恋する乙女というよりも、獰猛なハンターである。


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