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離れ離れになっても、いつか、どこかで









激しい痛みが全身を貫き、

倒れこんだ地面ははっきりと血の匂いがして

雲で覆われた空からは水滴がぽつぽつと落ちてきていた



脳は何かを悟ったのだろうか

昔の思い出が走馬灯のようによみがえる




『愛のパワーだ、うん!』

『うわ、てめっ』




あの時

二人で絨毯に大の字になって寝そべって

旦那は幸せそうに微笑んでいたんだ



「だん…なっ」



敵は勝利を確信したんだろう

オイラたち二人を残して退散していったようだ

やたらと重たい頭を持ち上げて、もう一人を探す

すぐ近くに旦那は倒れていた



体はもう起き上がることができないらしいので

匍匐(ほふく)前進のような形で旦那のもとへ向かう



やっとのことで隣にたどり着くと

旦那の核の部分には何かに刺された跡があり、そこから紫色の液体が漏れ出ていた

その不必要なまでに美しい液体を指ですくい取ると

旦那の瞼がゆっくりと開いて


「デ、イダラ…」


オイラの名前を呼んだ


「俺は、もう…死ぬ」


震えている手が伸びてくる


「でも…俺たち、また会えるんだろ?」


その手を握り、頬に擦りつけ、必死に頷く










「離れ離れになっても、いつか、どこかで」










旦那はそう言うと、目を閉じた


握っていた手が脱力し、生命の声が聞こえなくなった



「どっかの、安い小説じゃないんだからよ…うん」



溢れ出る涙を拭い、旦那の隣に倒れこむ





相変わらず地面ははっきりと血の匂いがして

雲で覆われた空からは水滴がぽつぽつと落ちてきているけど




あの時のように

旦那が隣で微笑んでいるから




地面はなんだか新鮮な草の匂いがして

真っ青な空には雲が浮かんでいるんだ










「離れ離れになっても、いつか、どこかで…うん」









そうしてオイラは瞼を閉じた





   

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