「絶対入ってこないでね!?ちゃんと話聞くから!!余計なことは…たぶんちょっとするけど、ちゃんとやるから!!」


私の部屋の前で固まって立っているみんなにそう釘を刺す。特に千鶴ちゃんね、と名指しすると、むっすり顔で頷いてくれた。

広場から一転、ここは私の部屋の廊下である。あのままでは埒が空かないと土方さんに進言したところ思っていたよりも早く陥落。私が秀吉に事情を聞くことになった。

千鶴ちゃん大丈夫かな、いやでもみんながいるから大丈夫か。
左之さんたちがぞろぞろと散っていったのを確認して障子を閉める。部屋のなかでは秀吉が心底怪訝そうに私を見つめていた。うん、そんな姿もかわいいね俺の嫁!!


「さて、じゃあ…………秀吉いぃぃぃ!会いたかったよおぉぉ!!」
「なっ澪!?話を聞くのではなかったのか!?」
「えー?聞く聞く聞くよー!」


その前に秀吉を堪能しようと抱きついただけだよ!!
どや顔でそう言い切ると、秀吉は心底残念そうなため息を吐いた。おぉっふ…このやりとり久々だわ!


「まぁまぁ、それで今からがまぁ本題ね。なんで秀吉はこっちにいるの?」
「…こっち?こっちとはどういうことじゃ?」
「あー…うん、まずは秀吉の質問に答えていくことにするわ」


とりあえずここが幕末で、新撰組屯所であること。本来の新撰組ではなくゲームの中の存在であることなどを説明する。
最近歴史に特化してきた秀吉にはそう難しい話ではなかったようで、すぐに内容をつかんでくれた。まぁ、受け入れたかどうかは知らないけど。


「じゃあさっきの質問に答えてくれる?」
「どうやってこちらに来たか、じゃったな?うーむ…そう問われても、わしも今一記憶が曖昧で明確な理由は思い付かんのじゃが…」
「ふむ…じゃあ気がつく直前に何してたかは覚えてる?」
「それは覚えておるぞ。明久や雄二たちと帰っておるところじゃった」


なるなる、歩いてたら突然落下してきたわけだ…。たしかによく見たら、部屋の角に見覚えのあるかわかばんが置かれてあった。落下時に一緒に落ちてきたんだろう。


「そかそかぁ…んー、じゃあ、なんかしてた?考え事とか」
「え!?いや、それは…」


思い付きの質問に対して突然言い淀んだ秀吉に首を傾げる。なんだろ、そんなに言いたくないことなら別に無理に聞いたりしないけどな。その旨を伝えようとした時、同時に少し赤い顔の秀吉が口を開いた。


「その…少し、澪のことを考えてたおった」
「!!秀吉…!!」


言い淀んでいた理由があまりに不意打ちで、思わぬところで胸がいっぱいになってしまう。いかんいかん、こんなことをしている場合ではないのよ、私!!


「成る程…ね、私と秀吉の思考が思わぬところでシンクロしてたってことか…」


これはもしかしてトリップするのに重要な手がかりなのかもしれないなぁ。ほら、私は帰るつもりはないけどさ、秀吉は違うわけだし。
…しかし、


「明久に雄二かぁ、懐かしい名前を聞いたなぁ」


ムッツリーニとか美波ちゃんとか、瑞希ちゃんとかさ、翔子ちゃんとか。もうどれくらい会ってないんだろ…
私の脳みそは私の意思を無視して勝手に過去を回想していく。
懐かしいなぁ、明久のご飯食べたいなぁ…瑞希ちゃん、料理の腕あがったかなぁ…ダークマターでもいいから、また食べたいなぁ…



さてみなさん、お忘れかもしれないから今再度言っておこうと思う。

私は、馬鹿である。



そしてここで、みなさんの予想は的中したことをお知らせしておきましょう。


「わあぁぁ!?」
「ぐっ…」
『きゃあぁぁぁ!!』
「…ん、雄二、大丈夫?」
「これが異常ない状態に見えるなら俺は今すぐお前に眼科へ行くことを進めるぞ翔子!!」



「…あ」





文月学園御一行様、ご到着ー…

じゃなくて



「(やっべどうしよう土方さんたちになんて説明しよう…!?)」



私はまず、自分の身を心配するべきだよね。


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