高グン・キンタロー
「雪を触るのは初めてだ」
昨夜から降り積もった雪に、グンマは朝から従兄弟を連れ出した。彼の色々な初めてを、グンマは家族としてたくさん与えてやりたいと考えている。今度もやはり彼はこの初めてに喜んでくれているようで、グンマは頬を緩ませた。雪を指先で弄ったりあるいは固めてみたりと未知のものにひたすら無邪気に慣れ親しむ様子を眺める折り、グンマははたと気がついた。
「キンちゃん、手貸して」
手袋もせずに雪を触っていたせいで、すっかり赤くなってしまっていた手はしっかりとした成人男性のものであるが、それをまるで幼子にするようにグンマは丁寧に息を吐きかけた。はあ、と白い靄のような息がキンタローのかじかんだ手を温めていく。
「なるほどな、温かい」
「でしょう?」
真面目くさってグンマの様子を観察しているキンタローが可笑しくてグンマは笑った。それから両手で彼の手を包み込んだまま擦り合わせて、もう大丈夫かな?と彼を見上げる。ああと微笑んで頷くキンタローに、幾らか昔の誰かが重なった。
「高松ぅ、手がいたいよー…」
「ああ、グンマ様…お手を出してください」
ふわりとかかる吐息が暖かくて、それから冬の寒い日はよく手袋を忘れるようになった。それだけじゃない、手を繋いでいてもらったり、高松のコートのポケットに手を入れてもらったり。
はじめのうちは「ちゃんと手袋をなさってくださらないとダメですよ」と注意をくれていた高松も、諦めて言うのをやめてしまうほどだった。冬の寒い日はいつだって、高松と呼べば彼はすんなりと暖かな靄と手のひらを差し出してくれたのだ。
過保護な彼のことだ、いまだって寒いと言えばすぐさま温めてくれるに決まっているけれど。
うん、とグンマは頷く。
「そろそろ戻ろっか、キンちゃん」
「ああ、そうだな」
「高松にあったかいお紅茶でも貰おうよ」
久しぶりに手袋を、と眉をひそめられるのも良いかもしれない。
10th.Nov.2011
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