流星群とアクタカ
アクタカ 2015/01/12

「今晩は流星群が見れるんだって」
 俺は見れたことないんだよなあ、こういうの。至極残念そうに、しかし既に諦めもついたように呟く河村に、対する亜久津は特に言うこともないという様子である。今回もさ、明日店があるからなぁなどと河村は勝手に続けているが、やはり亜久津が彼に応えて口を利くことはなかったので、ほとんど河村の独り言だ。カウンターに備えられた石のように無言を通す亜久津にひととおり河村が話し終えたところで、亜久津はようやく口を開いた。
「勘定」
「あ、今日はお金あるんだね」
 嫌味のつもりも無く言っていることは河村のひととなりを知っていればわかるが、舌打ちして亜久津は適当に財布から札を出してカウンターに投げ出した。




 わざわざ流星群などというものの為に夜空を見上げるのは初めてだった。そもそもこんなふうに星を見ようと空を眺めること自体、初めてだったのだと思う。
 ひとつ煙草をふかしているうちに、星が流れた。流星群とは名ばかり、一筋であったが、生まれて初めて見たそれに亜久津は暫し思考を止めた。これが河村の見たがっていた光景か。
 そういえば、流れ星には願いを掛けるのだとか、聞いてもいないのに河村が教えてくれた。




「えっ、昨日見れたのか。良いなぁ。亜久津は何かお願いとかした?」
 新しいたんしゃとか?仕込みを進めながら笑う河村に、亜久津は欠伸をかみ殺しもせずにさぁなと答えた。
 はは、夜更かし慣れてるんじゃないのかよと河村が笑う。うるせえと苦虫を噛み潰すようにぼやく亜久津の願いはとうに叶っているのかもしれない。


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