■ よる
「少し、寂しいね」
真夜中。灯りの落ちた部屋に、ひやりとした冷たい声が滑り落ちる。
声が聞こえた隣のベッドに目を向ける。
「…うん、寂しいね」
何でもないふりをして、私は彼女に言葉を返す。
小さな音を立てながら、彼女が立ち上がる。
「どこにいくの?」
「どこかに」
私とよく似た声、よく似た顔の片割れが、白いドアを開けて外に出ていく。薄く開いたままのドアからぼんやりとした光がこぼれる。
やっぱり…。ため息をこぼして、私は彼女の後を追いかける。
「ね、部屋に戻らないと…」
「いやよ。」
彼女はすぐに見つかった。廊下の先の大きな窓の前。彼女の一番のお気に入りの場所だ。
後ろに立って腕を掴んで軽く引っ張るも、帰ってくる返事はそっけない。私も仕方なくその隣に並ぶ。
「なにを見ているの?」
「空。」
「なにがあるの?」
「星。」
「今日はお月さまは出ていないのね」
「そうね。」
彼女との会話は、いつもこうだ。問いかけに、単語だけで返す、それは意図せずに会話を終わらせてしまう彼女の癖なのだ。
かといって、彼女は会話をしたくないわけではないらしいのだ。
昔、喧嘩をして丸一日話しかけなかったことがある。朝は、特になんてことも無いような顔で空を見上げたりしいた彼女は、その日の夕方には耐えきれなくなったのか、私のもとに来てこういったのだ。
"・・・やだ。"
たった一言。知らない人が聞けば誠意にかける一言かも知れない。
だけど彼女にはそれが精一杯で。全く同じ顔の私には彼女の無表情な顔が珍しく歪んでいるのが分かったから、それ以上は意地悪を続けられなかった。
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後書き?
ええと・・・突発的に書きたくなったのですが、気が付いたら着地地点を忘れていました。
補足すると双子の話。ってことですね。
未完なのに上げたのは最終的に妥協しました・・・笑
いわゆる自己満足ですので、ここまで読んで下さった方、(いらっしゃるかわかりませんが)本当にありがとうございました。
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