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「歳…!なまえが帰ってこないぞ!」


「はぁ!??」



部屋に走り込んできた近藤さんは目に涙を溜めていた。
局長が泣いてちゃ志気が上がんねえだろうがとか考えてる場合じゃない。

「山崎!全員呼び出せ!!」



床下か屋根裏にいるであろう山崎に声をかけてから近藤さんに落ち着くよう促す。
だが落ち着くどころか慌て出すばかりだ。


「なまえは随分と前から可笑しかった……家出?まさかどこの馬の骨かも知らない女子と…!」


「考え過ぎだ!なまえが金を置いて家出なんてするわけがないだろ、女もない!むしろ男のほうが有り得る!」


重症だ……近藤さんにとってなまえは弟よりも息子に近い存在。
扱いは娘そのものだが…。



「近藤さん、なまえがいないって本当!?」

「変な奴に連れてかれたのか!?」

「なまえは裏御法度で一番有名な奴だ、変な奴に連れて行かれるなんてありえねぇだろ!どんな大男だよ!!」



続々と俺の部屋に集まる幹部達。
その中には雪村だけでなく廻谷までもいる。

総司がなまえに近づけないように自分らが相手しているからと言われたため一目置いていたが…今回は話が違う。

「廻谷、お前は戻れ。」

「私もなまえさんが心配なんです!いさせてください!」


その瞬間、全員の目に怒りが現れた、近藤さんや山南さん以外の全員にだ。


「心ちゃん、副長の土方さんが出ていけって言ってるんだよ?大人しく出て行きなよ。」



総司の声に殺気が籠もる。
だがこの女はそんなことにも気づかずに反論する。


「私が一番最初に出会ったのはなまえさんです!最初に優しくしてくれたのもなまえさんです!だから私…!」


「だからなんですか?」

廻谷の言葉に我慢できず声を出したのは思いもしない雪村だった。
いつもは温厚だが信念を曲げない図太さなど見てきたが今は違う。


「そんなになまえさんに気に入られたことを自慢したいんですか?一日もたたないうちに名前で呼ばれ、恋仲のように仲良くしていたことを自慢したいんですか?
ここにいてどうするつもりですか?私も言えたことではありませんがあなたには言ってもいい気がします。
ここに来たばかりで右も左も何もわからない女が騒ぐだなんてみっともないですよ。この際だから言いますけど、私あなたのこと大嫌いで何度も殺そうとしたんですよ?」


「ち、千鶴ちゃん?冗談はやめてよ…。」

「そうだよ、間違いを教えちゃ駄目だよ。」



血の気が引いた顔をしている廻谷は雪村に問う。
その問いに答えたのは雪村ではなく総司だった。

間違いという総司の言葉に安堵した廻谷だがその次に続いた言葉が全てを壊す。


「"みんな"、大嫌いで何度も殺そうとしたんだよ?」



全員の殺気に漸く気づいた廻谷は逃げるように部屋から出て行った。





所詮あれはいらない存在



今はなまえの安否がすべて。



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