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俺が屯所から飛び出してすぐ、俺に追い討ちをかけるように雨が降り出した。
これ以上俺を追い込んでどうするつもりだよ……。
「おい。」
「…あんた…さっきの……」
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「悪いな、着流しまで借りて。俺を女呼ばわりしなければあんたを転ばせたりはしなかったんだが…。」
なんやかんやあってびしょ濡れになっていた俺に町の中心近くにある宿に泊まっているから来いと言われた。
このまま屯所に戻るのも癪だったし、男について行くことにした。
「なんか礼するよ、何がいい?うまい酒やうまい飯とかに関しちゃ詳しいぜ。」
「ならば、俺の嫁になれ。」
「死ね、俺は男だ。寝言は寝てから言えってんだ。」
なんで俺が礼だからって嫁にならなくちゃいけねぇんだよ。
まさかこいつに男色の気があるとは気づかなかった。
俺まさかの貞操の危機ってやつじゃねぇか?
「一応言うが俺は女にしか興味ねぇぞ、男とやりてぇなら陰間にでも行くんだな。
俺なんかよりずっと女らしくて汐らしいやつがごろごろいやがるぜ。」
「俺はお前に興味がわいた、鬼の嫁を探してここまで来たが……鬼よりお前は面白い。」
鬼の嫁?鬼嫁?
こいつ自分をケツに敷いてくれる女が好みなのか?
異人っていうのはよくわかんねぇ趣味持ってるのか……。
俺は尻にひかれるなんて真っ平ごめん被るけどな。
「てめぇの趣味は大方理解した、俺には無理ということもわかった。服が乾き次第俺は家に戻る。」
「聞きたいことがある、お前は…新選組…といったか、あいつらの何だ?」
ピクリと体が強張った。
何故俺が新選組の仲間だと知っていやがる。
こいつ……まさか敵の人間か…?
「鬼の女だけではなく、お前までもそこにいるとはな。
どこまでも俺の邪魔をしてくれる輩達だ。」
「お前……何者だ。答えによってはお前を捕らえる。」
俺の言葉に金髪男は笑う。
もしかしたら最初から俺を人質にして新選組を脅すつもりじゃ…。
「人間が俺を捕らえるなど遥か夢のような話よ。」
「お前みたいなやつを世間じゃ自意識過剰っていうんだよ、さっき俺に足引っかけられて転んだくせによく言うぜ…。」
俺が鼻で笑ってやればあのような戯言……と偉そうに言ってムカつくので蹴ってやった。
「あんた新選組の敵なんだな?一応言っておくが俺も武士の子だ。敵と分かれば相手するぜ。」
「そのような細い腕で俺に勝てると思っているのか?」
やっぱり見た目で判断する奴はいけ好かねぇ……。
俺は立ち上がり部屋に置かれてある大きな箪笥を両手で持ち上げて見せた。
金髪男は目を見開いて俺を凝視する、へへ……ざまぁみやがれってんだ。
伊達に新選組の雑用してないんだよ。
箪笥を下ろし男を見てもう一度鼻で笑った。
「あんたにいいこと教えてやるよ、人を見た目で判断するもんじゃねぇ。」
拳の喧嘩で負けるわけがねぇ
こいつを連れ帰れば戻ってきてくれるだろうか。
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