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俺の名前は近藤なまえ。
新選組局長、近藤勇の弟だ。
といっても血は繋がっておらず、本当は従弟にあたる。俺が生まれてすぐに両親が死んでしまい、父の兄であった近藤 に引き取られたのだ。



小さいころ、何も知らなかった俺は兄と同じようにに父上、母上と二人を呼んでいた。
俺が本当の子ではないと知らされたのは十二になった時、もう大人だからという理由で真実を告げられた。
だよね似てないよなと無理して笑ったけれどそれに気づかなかった父上と母上は安心して俺に笑い返した。


けれどまさか親と思っていた二人が親ではなく、兄と思っていた兄上が兄ではなかったことに俺は悲しくてしょうがない。


まぁこのご時世だ、いろいろあるさとなんとか乗り越えた俺。その後はいろいろな出来事が起こった。

まず実家の薬を売って商いをしている土方歳三に出会った。薬売りでありながら、侍を目指す彼と意気投合した兄。事あるごとに歳三さんは我が家へ訪れた。
最初に俺を見て歳三さんが言った言葉は今でもよく覚えている。「勇さんの弟?妹の間違いじゃねぇのか?」その言葉にあんた死ねばいいよと言いながら脛を蹴ってやった。


その次の出会いは沖田総司だった。
彼は父親が速くに死に、母親と姉二人、義兄と共に生活していたが生活が苦しくなったため父上が引き取ったのだ。
最初は恥ずかしがり屋で兄の後ろに隠れたりしていたけれど、だんだん化けの皮が剥がれていき今は歳三さんと睨み合いを繰り広げるほどになった。


そんな恥ずかしがりだった総司が変わったきっかけは兄や父に鍛えられたおかげ。刀との戦いにおいては俺は一度も総司に勝てなかった。

その後、源さん、平助、新八、左之さん、一くん、山南さん、いろんな人たちが兄のもとへ集まり新選組ができた。
まぁそのできるまでにもいろいろあったんだけど面倒だから省かせてもらう。



新選組ができて、羅刹という実験を手伝うことになったり。雪村さんがどこかへ行ってしまって、娘さんが京まで探しに来たり。

本当いろいろ、そのいろいろの中に新たないろいろが増えてしまった。


「えっと、どこ、ですか?ここは。」


それはある暑い日のこと。俺が水を汲もうと井戸へ向かったところいきなり井戸の中から女が現れた。
え、何これ?お化けってやつか?だから嫌だったんだよ、左之さんが百話物語しようとか言い出すからこうなるんだ。とぐるぐる混乱する頭。


そんな頭でなんとか冷静に判断しきっとこいつはとこからか忍び込んだに違いない。生きた人間だと言い聞かせた。



「お前、何者だ。どこの間者だ?」



「患者?違います、私病人じゃありません。」


そっちのかんじゃじゃない。なんだこの女、馬鹿か?馬鹿なのか?うん、きっと馬鹿なのだ。

女がよいしょっと言いながら井戸から出て、地に足をつけた。俺は露になった女の体を見て、盛大なため息をつく。

「…残念だが、俺に足を見せてもどうも思わんぞ。そういうのは新八みたいな阿呆に見せろ。
きっと興奮してご希望通り襲ってくれる。」


「え!?何言ってるんですか!この格好は普通の制服ですよ、今時みんなこういう服着てるし…それにまだこれはマシなほうです!
膝上15センチですよ!他のみんなは下着が見えちゃうんじゃないか、ってくらい短いのに…!」


制服?センチ?こいつの言葉はよくわからないが、とりあえずこいつがいた場所が破廉恥極まりないのはよくわかった。新手の花街でそれが流行っているのだろうか?
全くなんていう女の集まりだ、だらしなさすぎる。そういうところに集まる男はきっと新八みたいに頭まで筋肉でできているんだろうよ。
そうに決まっている、女というものは御淑やかであるべきだろう。そんな下着が見えるような服装なんて俺は興奮しない。肌を晒すのは布団の中だけでいい。




「…そういえばお前はどうしてここにいるんだ?」

「がく、知りませんよ!こっちが聞きたいくらいなのに!私が学校から帰ってたらトラックが突っ込んできて…ってそうよ!
私トラックに轢かれたんだ!ということは…ここ天国ですか?」


「天国に行きたいなら今ここで殺してやっても構わんぞ、奇怪な女。」


嫌です死にたくありませんと言いながらぶんぶんと頭を振り回す。それにより長い髪の毛も舞って顔に張り付いていて…恥ずかしい女だ。



「……しょうがない、本当に知らないようなら教えてやる。ここは新選組の屯所だ。わかったか?奇怪な女。」


「私、奇怪な女って名前じゃありません!廻谷心…って新選組!?え、それってあの!?」


「そんな足を出して井戸から出てきた女を奇怪と言わずして何というのだ。お前が言うあのというのがどの新選組なのかは知らないが、まぁ新選組はここ日の本には一つしかないだろう。」


見かけによらず酷いですね、なんてじとりとした目で見られたので鼻で笑ってやった。
さて、本当にこの女がどこから来たのかわからないというならば一応兄に会わせておくべきだろうか?念には念をと昔から言うし、よし、会わせよう。


「よし奇怪な女、お前を兄に会わせてやる。俺は所詮ここの使用人みたいなものだからな、決定権は俺にはない。
だからお前を兄のもとに連れて行きお前の今後を決めてもらう。あ、死は覚悟しておけよ。」


あんぐりと口を開けている女の腕をつかみ、引きずりながら兄のもとへ連れて行った。





その井戸曰く付き



今度左之さんと新八に昨日の仕返しをしてやろう。



改訂 12/16



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