「エレンの言っていることは間違っていなかったのう……」
ダンブルドアは目の前のテーブルに置かれた“鏡”を見て、ため息をついた。
その“鏡”には普通に考えればダンブルドアの顔が写っている筈なのだが、今は違っていた。
まるで監視カメラのモニターのように、ここはないどこかの映像が映し出されていた。
しかし、監視カメラ用モニターとは違って、音声まで聞こえるのである。
現に、その鏡からはしわがれた声で『エクスペリアームズ』と言うのが聞こえてきた。
「しかし、この鏡は凄いのう……」
ダンブルドアは渋い顔を一転させ、感心していた。
ここは校長室であり、校長の正面には例の如く呼び出された諒子がいるのである。
そして言わずもがな、このモニターの役割を果たしている鏡は諒子の仕事道具である。
直径25センチほどの、まさに教科書から引っ張り出してきたような銅鏡。
諒子の放った式神から送られてくる情報を映し出すものである。
ちなみに諒子は直接脳内で情報を受け取っているために鏡は見ていない。
「しかし、エレンの言ったことは本当によく当たるのう……」
“今晩、シリウス・ブラックがハリー・ポッターと接触し、ハリー・ポッターはそこで真相を知る”
要約するとこんなようなことをエレン・フェリスは校長に言ったそうだ。
だからこそ、こうして諒子が駆り出されて彼らを見守る事態になっているのである。
――『こいつが僕の父さんと母さんを殺したんだ!』
――『違うのハリー!止めて!』
叫び声が聞こえた時、薄暗い映像の中で止めたエレン・フェリスが弾き飛ばされていた。
そしてハリー・ポッターはシリウス・ブラックに杖を向けていた。
憎悪の顔で。
それをエレン・フェリスは必死に叫んで止めようとしている。
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