夜は眠れるかい

タカシの唇が首筋を這った。爛々と獣のように光る瞳がわたしを貫く。両手は彼の力強い片手に拘束され、もう1本の手は服の上から胸をまさぐっていた。いや、という声も聞き入れて貰えない。旭、と熱っぽい声が耳を擽った。
喘ぎ声が洩れる。胸をいじっていた手が内ももに移動した。ストッキングはとっくに脱がされてベッドの下。長い人差し指がショーツの上から割れ目をなぞった。
濡れてる、と嬉しそうに言われてたじろぐ。下着をずらして指が侵入してきた。やだ、やだ、やめて。



ぱちり、と目が開く。知ってる天井。私の部屋。あとはしんと静まり返っている。ああばかみたい、なんて夢を見ているんだろう。下半身に手が伸びて、やめた。あの人に犯される夢を見てそのまま慰めるなんて嫌すぎる。
それでもなにか物足りない身体が癪で、起き上がりベッドに腰掛けるとため息をついた。
そして意を決すると立ち上がる。なるべく足音を立てないように部屋を出た。そして静かに隣室のドアを開けた。微かな寝息。そう、あの男の部屋。
わたしの部屋には絶対に入るなと釘を刺していた手前入りづらくて入ったことはなかった。最低限の家具だけのシンプルな部屋。
息を潜め、一歩一歩ゆっくり部屋を進んでベッドに歩み寄る。こちらに背を向け、掛布団を被って眠る男。
ベッドまであと一歩。立ち止まる。タカシに弱いところなんて見せたくない。どうしようかとここに来て思案した。その時だった。旭、と呼ぶ声がする。タカシの声だ。

「旭、なにもしないからおいで」

壁の方を向いたまま彼はそう言い、少し壁際に詰めた。いつから起きていたのか。
ふとさっきの夢の男の声を思い出して身体がかっと熱くなった。この冷たい男もセックスのときはあんな熱っぽい声を出すのだろうか。
そんな邪なことを考えながらそっとベッドに潜り込んで背中合わせに寝転んだ。微かに触れ合う背中。タカシとはこれくらいの距離感が心地いい。

「怖い夢見たのか」

するとタカシがからかい口調で言った。本当は貴方相手の淫夢、しかしそうよと肯定しておいた。悪夢には違いない。
そっと目を閉じる。こんどは心地よく眠れる気がした。


/
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -