池袋サディスティックス

「やったね!あいつと連絡取れなくなった!」

店につくと小躍りのアサヒがそう言って抱きついてきた。彼氏と連絡取れなくなってこんなに喜ぶ女がいるものか。なにか見せたくないものを隠すかのように首筋に大判の絆創膏を貼る暑苦しいアサヒをひっぺがしながらよかったなあと返した。

「ユウキちゃんの話ではすぐに借金の督促が来てオーナーに呼び出される、わたしは録音して証拠をとるからしばらくしたらマコトはキングたち連れてあのデブ脅しに来て」

アサヒが目を輝かせながら最後の作戦を告げる。綺麗に並べたドミノを倒す瞬間は最高に気持ちがいい。やたらと無邪気な子どもっぽい笑顔に水商売向けの派手なメイクがちぐはぐだった。

「あーほんと、はやく呼び出してくんないかな。この仕事わたしにはむかないや。みんなすごすぎ」

そして低く小さな声でそう呟いてアサヒが周囲から死角になる場所から仕事場へと去っていった。
あと少しだから、がんばれよ。そう声をかけるとアサヒは口角だけは綺麗に持ち上げてありがとうと微笑む。商売のための作られた笑顔。
たぶん、心も体もぼろぼろにする彼女の中で1番に応援して欲しい人はおれじゃないんだろうな。先程電話を寄越した男の顔を浮かべてため息をついた。不器用な友人は持つべきじゃない。


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