工業高校の怪談

それからの話。
幽霊騒動はもちろん収束して下着泥棒も消えて、犯人を追いやったとタケルさんはまた一段とカリスマに近づいた。彼はマコトとタカシ、アサヒがやったんだよとは話していたが周りは聞いちゃいない。でも目立ちたくなかったのでおれたちは特になにも言わずタケルさんを立てることだけに専念した。
そしてタカシは最初の約束通り、おふくろさんが次に入院する1週間ぐらいはきっちり早めに家に帰るよう兄に約束させすこしほっとしたような柔らかな笑顔を見せることが多くなりおれも安心する。
そして慰謝料で焼肉に行こうと行ったアサヒの宣言通り、おれたちには到底手の届かない手の届かない少し高級な焼肉店で腹いっぱい食って帰った帰り道でのことだ。
そこでアサヒにそういえば例のこと聞けよとばかりに威圧を掛けてきた。つい気圧されて、ひきつった笑み浮かべながら隣を歩くタケルさんを見上げる。

「・・・ところでタケルさん、アサヒのことどう思いますか」
「どうって、なんだよマコト。前も言っただろ。勇猛果敢で頼もしくもかわいい妹だよ。うちにもこんなに元気でかわいい妹がいたらなあ、嫁に出し渋るほどかわいがりそうだ。なあタカシ」
「おれはべつに・・・」

タケルさんが悪びれもなく言い放って笑った。哀れなアサヒ。そうかあ、なんてがっくりと項垂れる彼女になんて声をかけようか迷った。

「・・・今度からもっとガンガン女の子アピールするからいいもん・・・」

しかしアサヒはおれにだけ聞こえる声でそう呟いた。うーん、やはり強い。肉食系女子ってやつだ。まあせいぜい、頑張ってくれよ。おれ達の未来はまだまだ長いはずだ。ぽんと背中を叩いてやるとアサヒはううと唸りながらもきらきらと笑うのだった。


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