ランプにオイルを差し、芯にオイルが染み渡るのを待ってからマッチを擦った。小さな小さな火花が散った後、一瞬と少しを置いてぼっと大きな火が灯る。そしてそれと共に一瞬のリンの香りが鼻腔を擽った。
その儚い匂いを味わうため小さく息を吸いながらオイルランプの芯に火を移す。そして火が移ったのを確認するとマッチを持った手をぱっぱっと振って火を消した。
それからマッチを捨てて手早く風防のガラスを被せる。これでよし。ゆらゆらと揺らめく炎を見て一息ついた。
今日はなんだかあまりにいい夜なので、外でゆっくりしようと思ったのだ。
だから家で1番座り心地のいい椅子と小さな机を引っ張り出してきて家の前に置いた。そして机の上には上等なワインの瓶とお気に入りのグラス、燻製にしたナッツとチーズを置いた。それからこのランプを置けば完璧だ。ほんの少しの駆け足でランプを片手に家を飛び出して机にそれをセットする。よしよし、完璧な居場所が出来た。
これでようやくゆっくり出来ると椅子に座り込んでグラスにワイン注ぎいれる。綺麗な深紅と熟成されたブドウの香りに癒された。ふうと幸せなため息をもらす。
すると傍に小さなねずみのような、小さなスニフのような、そんな不思議な真っ黒な生き物がやってきたので(ムーミンがむかし、この生き物をソフスだとかシャドーだとか呼んでいた気がする)彼に燻製のチーズをひとつ分けてあげた。
その子がお礼を言って、椅子の横に座って喜んでチーズをかじり出したのを見届けるとわたしは椅子に座り直して改めていい夏の夜を楽しむのだった。


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