少しずつ春が近づいてきた。昨日は溶けかけた雪の間から一輪の花が咲いているのを見かけたし、今日の風は微かに春の匂いがする。
積もっていた雪が少なくなり、なんとか家に入れるようになったので水浴び小屋に持って行っていた荷物を少し家に返して来た。
そして家から水浴び小屋に帰る道、高い岩に登って氷の海を見納めていると下の方からトゥーティッキの呼ぶ声がした。
「レディ、レディ、どこにいるの。スープを持ってきたわ」
振り向くと彼女が手を振っているのが見える。
「いま行くー!」
岩を滑り降りてトゥーティッキのところに駆け寄ると彼女は暖かいスープとバゲットをくれた。
「今日はこの辺りで食べましょうか」
氷が溶けて崩れ落ちる海の声が聞こえる。わたしは頷いて手頃な椅子になるものを探した。
「手伝ってくれてありがとう、今年の越冬はレディのおかげてだいぶ楽が出来たし心強かった」
「ううん、私こそありがとう。こんなに楽しい冬は久しぶり。また次の冬も手伝いたい」
「それならよかった、次もよろしくね」
トゥーティッキとの生活が終わるのは少し寂しかった。
氷の下で魚を釣ったり、暖かなスープを作ったり、雪かきをしたり雪像をつくったり。冬がこんなに楽しいものだとは。
おかげでムーミンたちと話したいこともたくさん出来た。春はもうすぐそこだ。手を伸ばせば届く春。雪を溶かす日差しに目を細めた。

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