ムーミンの家を訪ねた。この家の男の子は自分の部屋にいるという。階段を駆け上がって屋根裏へ急いだ。
そしてノックを3回、はあいと優しい返事。
「わたし、レディよ。ムーミン!早く来て!」
するとムーミンはがちゃりと扉を開けて飛び出てきた。
「どうしたの、レディ!」
「すぐそこで竜が2匹も飛んでるのよ、珍しいから見に行きましょう」
「ええっ、大変だ」
フローレンとミイで散歩していたらおさびし山の上の方で竜がじゃれ合うように飛んでいるのをミイが見つけたのだ。ムーミンに見せてあげたいと私は慌ててムーミン屋敷へ走った。
いてくれてよかった、私は先導をきって走りムーミン屋敷の裏手の小高い丘に登った。そこにはいつの間にかスニフも加わっていてみんな空を見上げている。
「まだいる?」
「いるよ、ほらそこ」
スニフが返事をしておさびし山を指さした。やっぱりまだ2匹じゃれて飛んでいる。兄弟か友達か恋人か、全く想像はつかなかったけれど仲は良さそうだった。
「すごいや、まだいるなんて」
興奮して上気したムーミンの声。間に合ってよかった、彼の顔を見て満足すると私も空を見上げた。



しばらくすごいね、仲良しね、なんて簡単な言葉を漏らしながら空を見上げていたがそのうち竜は雲間に消えて見えなくなってしまった。けれど私たちはその消えた雲間から目を離せず余韻に浸っていた。ムーミンの小さな竜を最後にもう地球上から姿を消したと思っていた竜が2匹も見れたんだ。
興奮と幸せで頭がぼーっとしていた。
「教えてくれてありがとう、今年はいい夏になりそうだね」
ムーミンもまだ空を見上げながらそう言った。夏の爽やかな風が頬を撫でスカートをなびかせる。
夏はすぐそこだ。

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