誰もわからない 2/2
※手籠め表現あり



誰も私のことは理解できない。
どんな気持ちで茉優を暴行して、どんな思いで結婚したか。
その間も茉優を思って、自分の醜さに苦しんだか。

分からないのだ、三成はそう呟いた。
自分がどこに向かっているのか、そしてなぜそこに向かっているのかも分かっている。分かっているが、認めたくはなかった。
三成は茉優と再び出会った横断歩道に向かっていた。わざわざそこに向かっているのは、胸騒ぎが止まらないからだ。
最近茉優の様子がおかしい。キスを拒むし、別れ際困った顔で俯いているのも胸騒ぎの原因である。どうしたと聞いても、茉優は首を横に振るだけで何も答えない。はっきりとしないことを嫌悪する三成は、茉優のその態度に苛立ちを覚えていたが、怒ってはいけないと決めたので強くは出れなかった。だからこそ不安が募る。
茉優に限って三成を裏切るようなことはしないと思うが、それでもということがある。高校生の時はその気持ちが暴発してあんなことになってしまった。だから今度こそは冷静に、茉優と話をしなければならない。だが茉優に連絡しても返事は返ってこなかった。
寂しい、苦しい、会いたい、何度も何度も思って、不安も相まり、今三成はあの横断歩道に向かっていた。
くだらないことだと理解している。あそこに行っても茉優がいるわけでも会えるわけでもないのに、運転をする手は止まらない。くだらないと呟いて、ハンドルを右へ切った。

やはり横断歩道は知らない人間がだるそうに歩いているだけで、しかも時間もあの時とは違って夜なのでますます面影はない。小さく息をついて、無駄足だったと思いながらもと来た道を戻ることにした。家に帰るのも億劫だ。茉優と出会ってからますます興味がなくなってしまった女と家で会話をして、夜を共にするということに嫌忌する。
どうやったら会話をせずに済むのだろうか、とぼんやり考えながらふと窓の外を確認したら、探していた女の後ろ姿が見えた。あの髪の長さにあの肩は間違いなく茉優だと確信して、三成は慌てて道端に車を止めて車から飛び出した。それでどうする、なんてことはどうでもよくて、やっと茉優がカフェの敷地にいることだとか茉優の目の前に男がいることだとかが理解できた。
そしてその男が家康だということも。

気づいたら、涙が出ていた。私が泣くべきではないと頭の片隅で思って、そのあとどうしたのかわからない。きっと涙をぬぐった。駆ける気力もなくて、どこか吐き気を覚えて、それでもゆっくり歩いた。茉優の肩をつかんだ時に、やっと冷静さを取り戻した。だがそれは正気を保つための冷静さではなく、狂気を正当化させるための冷静さだった。
驚いたような顔をして見上げている茉優にどうしようもなく愛情が溢れて、どうしても許せなくて、腕をつかんで店を飛び出していた。
しゃくり上げたくなるくらいに悲しい。茉優のことをちゃんと見つめることができるのか自分でもわからないくらい悲しかった。乱暴に茉優を車の後部座席に押し込んで、三成は運転席に入ろうと思ったのだが、頭痛で体がぐらついて車の天井を手で掴んだ。銀色の車体を睨み付けて、何とか頭痛を乗り越えた。
深呼吸をして運転席に乗り込んで、ちゃんと運転できるだろうかと思いながら車を急発進させていた…あてもないのに。




どうすればいいのか、ハンドルを切りながら考えたが何も答えは出なかった。ただ漠然とした怒りが胸の中にあってそれは後ろにいる茉優にすべて注がれていた。正直運転には集中できておらず、何度もガードレールや前の車にぶつかりそうになったが、それでも焦りはなかったことに三成は自分でも少し驚いていた。
ついた先は知らぬ公園の駐車場で、夜ということもあり無駄に広い駐車場には一台も車は止まっていない。そのことを確認してここに留まっているのだから、自分は卑怯者で詭弁を弄している。
どうしようか、そう自分に聞かせると、煙草を吸いたいと脳は訴えていた。煙草なんて年に数回数か吸わないかくらいなのに、なぜ今…。だが吸いたい、そう自覚するとその欲求はどんどん膨らんでいく。三成は持っていないことを知っていながら、ズボンと上着のポケットを探って、グローブボックスを探った。もちろん煙草の姿はない。

「茉優、煙草を持っているか」

振り向かず、グローブボックスをもう一度あさりながら聞いても返事はない。まさか逃げたのかとありえないことを思いながら振り向くと、茉優は鞄を抱えてこちらを見ていた。その目は怯えを訴えていて、そしてその怯えの原因はお前だとでも言いたげに茉優は腰を浮かせて三成と距離を取ったところに座った。

「煙草は持っていないのか?」

茉優が煙草を吸っているところは見たことがないのだが、どうなのだろうと茉優を見つめていたら、耳に今言葉が届いたと言ったように数秒たっぷりおいたあと首を横に振った。望み薄なのはわかっていたので、そうか、と言った後、三成は財布を確認して車から降りた。
コンビニで煙草を購入して戻る途中買った煙草を吸いながら、わざわざつれてきた茉優を車に置いてきたのは何故なのだろうと自問した。すぐに答えは出たが、それは自分でも笑えるものだった。
逃げてほしいと思っていたからだ。答えは、逃げていいと、逃げてくれと思っていたから。煙草を吸ったら本当の冷静さを取り戻すかと思ったが、無理そうだ。
怒りが治まらない。今すぐに茉優を、……。
足早な三成はすぐに車につき、まだ煙草も吸い終わっていなかったので、車の中で煙草を吸った。窓を開け、換気をして煙を吐き出す。後ろに茉優がいるのは先ほど外から見えた。身じろぎ一つしないし、呼吸の音も聞こえないので姿を見なければ確認できないぐらい静かに茉優は座っている。
煙草を吸い終わるとポケット灰皿に押し込んで、そのポケット灰皿もグローブボックスに押し込んだ。そして、フロントガラス越しに見える何の情景も感じられない木々たちを見つめて、意味のないため息をついた。
冷え切った心を持ちながら、心の真ん中で燃え滾っている怒りを抑える術もない今の心情を自分のことながらも少しおかしいなと感じた。それでもこの怒りは三成のせいではない。畏怖を感じるというのならそれは茉優と三成の関係の大事さを、わかっていないだけだ。
かといって茉優のせいだけにするというのもおかしな話になるが、三成のせいというわけでもないだろう。責任転嫁をしている場合ではない、と三成は首を緩く振った。
後ろを振り向きつつ車の外に人がいないことを確認して、三成は後部座席にいった。そして茉優の髪を梳いた。柔らかくて綺麗な髪の毛。一本一本丁寧に洗ってやりたいとさえ思える愛おしい茉優の髪の毛だ。それでも自分は、茉優が妙なことを言ったらこの髪の毛を握って、引っ張ってしまうのだろうと思うと愛おしいという言葉さえもちっぽけに思える。

「何故逃げなかった」

どう聞けばいいかなんて悩むことはなかった。
髪を梳きながら聞くが、茉優は何を躊躇っているのか口を開こうとしない。
また逆戻りだ、と思った。このままではまた最初からになる。茉優が三成のことを恐怖の対象として見ることになると。
だがそれでもかまわなかった。今のこの怒りがなくなるならば、茉優が三成のことを嫌おうと別に問題はない。
答えないのならそれは、今から三成がすることを肯定すると言っているのも同然だと思い、三成は俯いた茉優の顔がよく見えるように髪を引っ張った。小さくうめき声をあげて、無理やり顔を上げさせられた茉優の表情は悲痛なものだった。

「ごめんなさい…」

何と言ったかわからなくて、もう一度髪を強く握れば今度は大きな声でごめんなさい、と茉優は言った。何に対して謝っているのか三成はよくわからない。もしかして、家康といたことは茉優が悪意を持ってやったことだとでもいうのか?

「ごめんなさい、三成、ごめんなさい」

とうとう泣き出した茉優に三成は漠然とした憤怒と困惑しか抱けなかった。むしろ謝るのは私ではないのか?そう思いながら、いい加減この静かな車内にわけのわからない茉優の泣き声がするのに苛立っていて、三成は片方の手で茉優の首を絞めた。細くて今すぐにでも折れそうだと毎度毎度抱くたびに思っていたが、こうして手にかけてみると本当にその通りで、一度力を思い切り込めてしまえば茉優は確実に死んでしまうだろうというぐらい、この首は脆い。頸動脈が脈打っているのが手のひらに伝わってきて、生きているのだと変な高揚感が胸の内から溢れてきた。
茉優は泣きながら三成の腕を両手で握っている。弱弱しい力では到底三成の腕をどかすことなんてできないのに、時折息を詰まらせながらそれでも抵抗をやめない。これ以上抵抗されたら…、殺してしまいそうだ。
両手を離して服に手をかけると、息も絶え絶えに苦しそうに呼吸する茉優がまた涙を流し始めた。上着を無理やり剥いで、グレーのニットを脱がすと茉優がとうとう首を横に振って嫌と言い始めたが、もう遅いと呟いてYシャツを破いた。痛快な音がして破れたそれは、何年か前に破いた茉優が着ていた制服にそっくりで、紺のタイトスカートも言われてみれば制服のスカートに見えてくる。
自嘲したが、もう止まれるはずもなく、三成はスカートを捲り上げた。今度こそ後退して(逃げる場所などどこにもないというのに!)逃げようとするから、髪を引っ張って右頬を殴った。振りかぶらずただ殴っただけなのに、すべての恐怖がその身に降り注いだとでも言いたげな顔をして茉優は動かなくなったので、三成は口の端から垂れた血を舐めた。





逃がすつもりはなかった。だって茉優は逃げるチャンスがあったのに、逃げなかったのだ。それはまだ三成とともにいたいということだと解釈をしていて、ただ少しばかり三成に対する印象が恐怖になってしまっただけだと思っていた。
ただ茉優を犯している最中に、茫然と思ったのが茉優が目の前から消えることだった。

まだ慣らしてもいないそこに無理やりいれて、無理やり動いて、抵抗すれば殴って、泣けば怒鳴って、茉優を服従させた。それを実行したことによって得られた快感は計り知れない。
だんだんと濡れてきたそこを指でいじりながら腰を動かすと茉優は泣きながら嬌声をあげ始めた。その声を聞くと胸のうちで何かが弾けてそのまま溶けていくような感覚に陥る。愛おしいと思っている、という意味だ。
殴りすぎて赤くなった頬を撫でて、泣きすぎて真っ赤になった瞼に口づけをして、首を絞めた。狭い車内で自分の息と茉優の苦しげな息が聞こえてる空間に、いつまでもいたいと思うほどここは幸せな空間だ。
茉優の血は綺麗だと三成は思う。初めて犯したときに真っ白な腿に流れたあの血は今でも忘れない。そして今も口から流れる血はとても綺麗で何回も舐めて何回も舌で味わった。茉優のきめ細かな白い肌に赤い血はよく映える。

散らかった頭の中でそんなことを沢山考えて限界に達しそうになった時に思ったのが、先ほども言ったが、茉優が消えることだった。このまま犯し終われば茉優はいなくなると思った。三成の前から消えると感じた。

『許さない。そんなことは絶対に許さない』

そう呟きながら茉優の首を絞め続けて、とうとう達しそうになったときに、自分の腰を茉優のそこに押し付けた。奥に届くように、絶対に離れないように、お前は私のものだと証明するように、三成は白濁を最奥に注いだ。茉優の中も比例するように痙攣したので、達したようだ。
やっと茉優の首から手を離して、自分の息を整えている間に、自分が何をしたのかだんだんと理解してきた。孕めばいいと自分が思っていたことにようやく気付いて、そうか孕ませればいいのかと納得した。責任なんて取る取らないの問題ではない、私と茉優だから、そんなことを思いながら、茉優を見た。
涎と血が混ざった液体を口から流して、頬は腫れ、首は手の痕がついている。破られたYシャツはYシャツの意味を成していないし、いつの間にかできている腿の傷からも血が出ていた。
ゆっくりと自身を引き抜いて、三成はひとしきり笑った後、またもう三成のがすっぽり入るようになっているそこにいれた。茉優は身を反らし、その際に涙が一筋流れたが、三成は見て見ぬふりはせずその涙を舐めとることにした。
舌は血の味でいっぱいだったので、涙の味はよくわからなかった。




- - - - - - - - - -

(短い)

 >>TOP >>短いはなし

_6/14
しおりを挟む
PREV LIST NEXT
: TOP :
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -