かわいい先輩
三成は悩んでいた。
それはもう今までの人生最大の危機だと言っても過言ではないほど…とはいえ三成はまだ17歳なのだが。それでも悩んでいた。
原因はすべてあの自由奔放で婀娜な仕草をする先輩なのだが、その先輩によって三成が悩むことは大きく分けて2つある。

その一つは性欲についてだ。家に帰って静まり返った部屋であの事を思い出してしまうと(だって先輩とはこの部屋でしたのだ…)、どうしても腰がうずいて興奮してしまう。先輩の声とか、熱とかがはっきり思い出せるのだからもう自分はおかしい。先輩の小さい指が自分のあそこを触って、先輩の赤い舌があそこを舐めて、先輩の桃色の唇があそこを食んだのを思い出すとどうも、おかしくなる。ただ思い出しているだけなのに体が熱くなるし、それと同時に何かが物足りない気がしてくるのだ。
自分の上に乗って腰を動かす先輩は、なんていうのだろう…その、愛らしい?…可愛らしかった。頬を桃色に染め上げて目のふちに涙の膜を張りながら、口から妖艶な声を漏らしていた先輩は今まで見てきた先輩とは全く違う…いわゆる大人な女に見えて、その女が自分の上に乗って腰を振っているのだから頭がおかしくなってしまうのも当然なのかもしれない。そうだ、自分は頭がおかしいのだ。だって、もう一度あの行為をしたいだなんて、頭がおかしい以外のなにものでもないだろう。

そしてもう一つの理由が、これまで以上に先輩と接することが難しくなったということだ。
今までもあの先輩は急に抱き着いてきたり頬に口づけをしてきたり、とんでもないことをしてくる人だったからどう対処すればいいのか困っていた。いや、意中の女性にそんなことをされたら誰だって困ると思う。
だから今までも困っていたのに、先日あんなことをしてしまったからもっと接しづらくなってしまった。翌日、先輩はふつうに生徒会室に姿を現したが、あの時三成は上から下までじっくり先輩のことを見て(主に胸と足)、みるみるうちに顔が赤くなっていくのが自分でもわかっていた。校内の見回りの仕事は任されていなかったのに、慌てて見回りに行ってきますと生徒会室を出てその場から離れ、やっと落ち着いた。
だが、その日から先輩を見かけたり先輩が話しかけてきたりするたびに、顔が熱くなって胸の内が苦しくなるから、先輩と接することが出来なくなってしまっている。
それが三成の悩みだった。
先輩のことは好きでたまらないのにそれを表現する方法を知らず、自らを苦しめている。
滑稽で仕方ないが、解決する方法を知らないわけではない。先輩、好きです、こう言ってしまえばすべては解決するのだ。そんなことわかっているから悩んでいるんじゃないか…。




どすん、と背中に衝撃がきて、一瞬不思議に思うもすぐに誰の仕業か分かって、振り向きもせずに固まった。ここは学校の廊下で、人だって通っているのに、この先輩は…。
抱きしめる力が弱まって、三成の横からひょっこり顔を出した先輩はへへ、とわざとらしく笑った。だがその笑顔に三成が弱いのも事実。

「ごめんね、だって最近石田君すぐ逃げちゃうんだもん」

そう言って、自分の毛先を指で遊んでいる。あの髪が乱れるところを思い出してしまって、頭を緩く振ってその邪念を追い払った。

「…すみません、生徒会がありますので」
「えー、また生徒会〜? たまには遊んでよ〜」
「仕事ですから」

やんわりと言えば先輩は唇を尖らせて俯いた。ああ、あの唇を舐めたい…。
そんなことを思っていたら、何故だか理解できないが自分は先輩の腕をつかんでいた。細い腕だ。腕を掴まれた先輩はさっきの表情とは打って変わって、きょとんとした表情で三成を見上げていた。そんな愛らしい顔をして、よく先輩の周りにいる男子は我慢できるな。

「なーに? 石田君」

先輩が首を傾げると、さらりと髪が動きに沿って動く。綺麗だ、とても。

「あ、…いや…」
「また黙るー、言ってよぉ、超気になるんだけど」

先輩はそう言うが、三成が先輩に好きだと言ったら先輩はどんな反応をするだろう。
確かに先輩はあの時、三成のことが好きだと言った。だがあれがその場しのぎの冗談だったとしたら? 三成が今好きだと言ったとしても冗談だと受け取られるか、断られるかのどちらかだろう。別に交際をしてほしいとかそういわけではないのだが。ただこのままでは自分の心が晴れないのだ。
どうすればいいのだ、と俯いたら、先輩が目線をきょろきょろと左右に動かしていた。もうどうでもいいのだろうか。そんなことを思っていると、先輩は三成の顔を覗き込んで心配そうに瞬きをする。
顔が、近すぎるだろうが…!

「…わたしに、言えないことなの? わたし、石田君の力にならなるよ」

言い終わった唇は決意を示すかのように、きゅっと引き締められている。そんなこと言われては、こちらだって言うしかないじゃないか。ただでさえ先輩のそういう姿には弱いのだし。
少しだけ考えて、三成はバッグから自分の家の鍵を出した。何もついていない裸の鍵。それを先輩の手に押し付ける。先輩は慌てて受け取ったようだが不思議そうな顔で鍵を見つめていた。まだよくわかっていないのだろう。
視線をゆっくり上げて、先輩の顔を見る。こう見ると意外と先輩は背が高い。それでも三成の頭一個分は下だ。先輩は、もしかして、という顔でこちらを見ていた。

「…待っていてください」
「えっ。えっーと、石田君のおうち…で、ってこと?」

それ以上言ってくれるなと泣きたくなり、だが素直に頷く。先輩は、へぇーだとかあーだとか言いながらも頷いてくれた。いたたまれない気分になり、三成はそれではと早口で言って生徒会室に向かって駆け足で廊下を進んだ。



帰り道を歩きながら、三成はかなり焦っていた。
もしかして先輩は帰ってしまったのでは、ということだとか、もしかして先輩は用事があったのかもしれない、とかそういう心配ばかり。自転車とぶつかりそうになって知らない男に罵詈雑言を浴びせられても、三成はその声が聞こえずただ先輩のことを考えながら帰路を歩いた。
勝手に自分の家で待てと言って、しかも逃げられないように鍵まで渡して、なんて自分は最低なんだと思った。と同時に、あの一瞬の判断であそこまで出来るとはなかなか自分はやるなと感心している自分にも驚いた。どちらに転んでも最低だ。
アパートの廊下を進んで、自分の部屋の前に立って無意識に鞄をあさった時に、そういえばと思い出す。鳴らしたことのない自分の部屋のチャイムを、少し躊躇したが押した。すぐにはーい、と先ほどまで聞いていた先輩の声が自分の部屋の奥からして、数秒してドアが開いた。不用心な、確認ぐらいしろ、と思いつつ、自分の部屋の玄関に先輩が立っていることに感動を覚えていて言えずじまいだった。

「おかえりなさい」
「…あ、ああ…ただいま」

この状況なんだかおかしくないか、と聞きたくなったが聞けず、玄関に上がって後ろ手に扉と鍵を閉めた。靴を脱ごうとしたときに鞄をひったくられて、犯人を睨み見れば犯人は笑いながらリビングに戻っていく。後姿があまりにも無防備で、心配になった。
リビングに行けば、あの日とは違う場所に(部屋と部屋の境)座っている先輩がいて、数秒動くことが出来なかった。おいでよ、と自分の家なのに言われて、渋々先輩と少し距離を取りながら三成も座る。
テレビもないので、妙に静けさが広がるこの部屋で、自分は何をしたくて先輩をここに呼んだのだろうと考えてみたのだが、やましいことしか思いつかなくて本当に自分が嫌になる。何か言わなければと分かっているのだが、何も言えないから黙って俯くことしかできない。
だが先輩はそんな三成をどう思ったのか、また顔を覗き込んだあと体をぴったりとくっつけて寄りかかってくる。頭を三成の肩に預けて、小さな手がゆっくりこちらに伸びてくるのだから驚いた。その手が三成の手を握って、またこちらを見て微笑む。…。

「言えないんだったら言わなくていいけど、言っちゃったほうが楽になることもあるぞー。先輩からの教訓」
「……有難い、のですが…」
「ん?」

だって先輩はどんなことでも受け止めてしまうじゃないか。三成の後ろ暗いところだって笑って受け止めてしまうのだから、甘えてしまいたくなる。期待してしまうのだ。
三成はどうしようか迷った挙句、手を握り返した。そして、自分でも驚いたのだが、ゆっくりと先輩の唇に自分の唇を押し付けていた。柔らかい…この感じだ。あの日を思い出す。
先ほどと同様にゆっくりと唇を離して、先輩を見つめた。先輩は驚いているようだが、随分と間抜けな顔になっていて少し面白かった。

「…石田君ったら、ちゃんと言葉にしないと分かんないのに」
「…それは、その…」
「したいの? せっくす」

小首を傾げながらそんな言葉を吐く先輩を恐ろしいほどに愛おしく思って、だけどやっぱり羞恥心が勝るから顔が熱くなる。そうやって三成が反応するから先輩だって言葉にしない三成の気持ちに気づいてしまうのに、どうしても反応しないことはできなかった。やっぱり自分は先輩に期待している。とんだ変態に…成り下がってしまった。
先輩はにこにこしながらこちらに迫ってきて、手を握ったまま三成の股の間に足を割り込ませてきた。そして微笑んだまままた口づけをされる。だがすぐに唇が離れてしまったので、名残惜しさを誤魔化すように目をそらした。だがまた口づけをされるから、もう本当に、そろそろ変な気分になってくる。ただでさえ家に帰ってきた時から興奮していたのだから三成がこの空気に耐えられるはずもなかったのだ。

「は、恥ずかしい、から…」
「恥ずかしいから言えないの?」

先輩は膝でもう盛り上がっている三成の股間をぐりぐりと押しながらそう言った。痛いぐらいだが、それすらも気持ちよいから三成は頷くことしかできない。

「じゃあ、言ってみて…茉優先輩とせっくすがしたいですって」

石田君はいい子だから言えるよね、と微笑まれても、言えるわけがないだろう。言えないからこの日まで悩んできたのにどうしてこんな恥ずかしい状況で言えようか。だけど言わなければ先輩はしてくれないのだろうか。それは、それで…だめだ。
これ以上熱くなることがあるものかというぐらい体まで熱くて、先輩と握っている手を無意識に強く握っていた。だが先輩はまだ微笑んだまま、三成を下から見上げている。手は股間を撫で上げながらだ。
結局のところ、欲に負けた。

「…っ、茉優、先輩…と、せっくす…がしたい」

泣き上げたくなるぐらい恥ずかしい。いや実際のところ少し涙が滲んだ。
なんで自分は言えたんだろう。目の前の欲に負けたからだ。目の前の欲は、拍手までしそうな勢いで微笑み、すくう様な口づけをしてきた。それも今までしたことがないような、もっといやらしい気分になる口づけだ。頭の中が痛いぐらいに歪んでいく気がしたが、それもきっと快感による錯覚なんだろう。ちゃんと言ったんだから、このくらい気持ちいいほうがいい。いや、これよりもっと気持ちのいいことをするのを知っているから、三成はされるがままだった。
だが先輩が唇を離すと、手も離して離れて行ってしまったので、そんな…という気持ちになる。もしかして遊ばれただけなんだろうか。だから言ったじゃないか…。
鞄を手探りで持ってきて、その中から何か四角い小さなものを取り出した先輩は、それを三成の前にかざした。そして三成の表情を見て苦笑している。

「そんな泣きそうな顔しないの。ほんと可愛いな、石田君」

拗ねたくなるぐらい先輩の言っている意味とかいろんなことがわからなくて、結果拗ねる様な態度になってしまう。可愛いなんて、自分より何倍も先輩のほうがかわいいのに、先輩は可愛い、ともう一度言うと軽く口づけをしてくるのだ。たったそれだけの口づけなのに、さっきまでの感情はどこへやら、三成は満足だった。

「石田君はかなりえっちの知識が乏しいので、わたしが教えて差し上げるね」
「は、はあ…」
「これは、ゴム…ていうか、コンドームっていうんだけど、何に使うかわかる?」

先ほどまでの雰囲気はどこに行ったと言いたくなったが、言わずに考えた。だが考えよりも浮ついた気持ちが勝って、ろくに考えもせずに首を横に振る。すると先輩はそっかぁ、と呟いて三成のズボンのチャックを下ろし始めた。驚いている三成なんて見上げもせず、ベルトまで外していくから先輩は怖い。
そんな先輩はグレーのパンツ越しに盛り上がっているそれを撫で上げると、おろすよ、と一言言ってからズボンも下ろし始めた。うう、だかなんだか自分の声から漏れて、気持ちいいことが出来るのは分かってるんだがやはり恥ずかしいものは恥ずかしいから、パンツまでもが下ろされるところはさすがに直視できなかった。
全部脱がすことはさすがに困難だったのか、膝辺りにズボンとパンツをとどまらせておいて、先輩は三成のいきり立つそれを指で握った。触られただけなのに、もう腰が重くなっている。ゆっくりと摧かれて、自分の口からまたいやな声が漏れた。イきたい?と聞かれて、わけもわからないので首を傾げるととりあえずイっとこうか、と笑顔で言われてわけもわからぬまま頷く。すると先輩は摧きながら先端を口に含んで、またあの日のように舌で舐め上げたり口の中を行き来させたり、とんでもなく気持ちいいことをしてきたのだ。
先輩の唾液とか、自分のから出てくる液体が混ざって床に垂れているのだが、そんなことどうてもよかった。気持ち良すぎて、どうにかなりそうなのだ。だがもっとどうにかなりそうなほど気持ちいいことを三成は知っている。

「あ、あっ、あ…っ、先輩っ…」

腰が大きく痙攣したように跳ねて、あの時とまではいかないがものすごい快感が三成を襲った。つまり達したのだ、先輩の口の中で。荒い息が自分から聞こえていて、先輩はというと口の中に出したものを飲み込んでいる最中だった。そんなもの飲んで何か楽しいのだろうか。
そしてまた先輩はにこにこっと笑って、こんどーむとやらを破った。その中から出てきたのは、水風船に酷似している何かだった。これがこんどーむなのか。
達したのにまだ元気な三成のそれを握ると、先輩はそのこんどーむを被せて行った。最初はなにをしているのか分からなかったが、だんだんこれは避妊具なのだとわかり始めて、そういえばあの時は何もつけなかったが大丈夫なのだろうか、と思った。そんな三成の心を読んだのか、先輩はあの時は薬飲んだんだよ、でも薬だけじゃ不安だからこういうのつけるの、と説明してくれた。妙な桃色のそれが自分のに被っているのを見ると、なんだかもう世界中の恥ずかしいことすべてを体験したような気持ちになる。
それより、先ほどから先輩はスカートの中に片手を入れているが何をしているのだろうか。気になって精察していたら、やだあんまり見ないでよ、と言われてしまった。

「いいの、女子には女子の準備があるんだよ。ほんとは男子が手伝ってあげるんだからね? 今度は石田君がしてよ?」

その手伝いとやらの内容がよくわからないが、今度、という言葉に感嘆を覚えて頷いていた。また次があるのだ、先輩と。嬉しすぎてその言葉だけを何度も頭の中で繰り返していた。 "今度は石田君が…"
余韻に浸っている三成には気づかないのか、先輩は淫らな息を少しだけ漏らして、パンツを脱いだ。スカートが邪魔で見えないが、あのスカートの中はもう…。また見すぎたのか、先輩が石田君って馬鹿正直だよねと言ってパンツを放った。その言葉さえも嬉しかった。

自分の上に乗った先輩を見るとあの日を思い出す。
先輩のあそこに宛がってゆっくりと身を埋めて行くおもいは、本当に生きててよかったとさえ思えるぐらい気持ちがいい。ぬめぬめとした、舌にも似た粘膜が三成のあれを包んでいく。気持ち良すぎてどうにかなりそうとは、まさにこれのことだ。
全て埋まったのか、先輩は少しだけ喘いですぐに三成に口づけた。腰の奥と奥をこすりつけるようにお互い腰を動かしながら、あの気持ちいい口づけをした。実のところ、三成はもう勝手に腰が動いているときもある。もっと、もっと、と思って動いてしまうのだ。
だってこんなに多幸で、腰が抜けそうな快楽に包まれて、しかも可愛らしい先輩が自分の上で腰を振っているのを見て、どうしてもっとなんて思わずにいられるだろうか。
卑猥な音が腰がぶつかるたびにして、耳までもが犯されていくような感じがしている。先輩と口を離して、もうほぼやけに呟いていた。

「先輩、好き、です」
「えっ、あっ、ああ、あ…っ、あ」

あの先輩が動揺して、びくんと腰が跳ねた。中がびくびく痙攣していて、それに伴って三成も達した。腹のうちのものを全てさらけ出す様に駆け上がってくる快感に逆らわず、達するのは何と気持ちがいいことか。
落ち着かない息をお互い整えながら、この幸せな空間にずっといたいと無謀なことを三成は思っていた。ゆっくりと顔を上げた先輩を見つめて、なんでそんな顔が真っ赤なのかと聞いた。すると先輩は誤魔化すように口づけをするから、まだ繋がったままのあそこがまた元気になってしまう。衣類でさえ先輩と三成の間にいることが許せないぐらい、目の前の先輩は愛らしい。

「んっあ、あ…、石田君、もっかい言って、好きって」
「えっ…あ、好き、です」
「あー、かわいー……」

そう言った先輩は首に腕を回して抱き着いてきたので、三成もゆるゆると抱きしめ返した。柔らかい胸が服越しに口にあたってそういえば胸を揉んでいないと思い出したのだが、もっと柔らかい体に包まれていることが三成には十分すぎるので、無駄なものを映さないよう三成は目を閉じた。



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(ここでもう付き合っていいはずなのにこの人たちは付き合うまでにまた一悶着ある)


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